和泉和子君の質疑-七

(志村復興担当大臣)

 先ほども説明したとおり、除染作業はその緒に就いたばかりであります。現在避難指示区域において年間被曝線量二〇ミリシーベルト以下を達成出来た地域は皆無でございますので、現時点において各世帯に対する支援継続或いは打ち切りを明言することは適当ではない、未だその段階にないと考えております。


(和泉委員)

 これから除染作業と帰還事業を進めていこうという政府が、福島でも問題になった案件について全く無為無策であるということがよく分かりました。

 引き続き大臣に伺います。

 政府が盲目的に信じているICRPの基準に関しましては、先ほど説明させてもらったとおり科学的根拠もなく、原子力政策推進の観点から定められたものであると申し上げました。政府としてなお、この根拠薄弱な数字に依拠して、違法な被曝を避難民に強要するつもりでしょうか。

 お答え下さい。


(志村復興担当大臣)

 委員は、ICRPの元委員の発言を根拠としてその基準が科学的根拠を欠くと指摘されましたが、当該元委員の発言が真正になされたものかどうか明らかではありませんよね。委員もご指摘のとおり、放射線被曝というものは線量が低ければ低いほど人体に対する影響の程は明らかではありません。様々な議論がある中で、発言者の意図というものは発言時期やその時に組織内で置かれていた立場、その発言者が得た科学的知見によっては組織の総意に反するものも中にはございます。私は和泉委員が指摘されたICRP元委員の発言については承知しておりませんが、発言者の意図を知り得ない以上は組織としての総意に基づき発表された基準を根拠とする以外にないんですよ。


(和泉委員)

 では、健康に影響があっても国際基準に則った数字ならば被曝してもしようがないとお考えでしょうか。それっておかしくないですか。

 健康に影響がないことが明らかだから国際基準になる、という話なら分かりますけれども、国際基準でそう決まってるから健康被害が出ても仕方がないというのは、これは意思決定のプロセスとしては順序が逆ですよね。結論ありきですよ。


(志村復興担当大臣)

 しようがないなんて言ってませんよ。既に示されている根拠につきましては国際機関が定めた基準であり、政府としてこれを採用する方針に変わりありませんということを申し上げているんです。


(和泉委員)

 でも違法なんですよ。


(志村復興担当大臣)

 国際機関で認められた数字であります。


(和泉委員)

 国際基準ではなくICRPという一民間団体が定めた数値です。これが国内法で定められた数値に優越する理由を教えてください。


(廣瀬内閣総理大臣)

 平時であれば当然国内法を優先して適用致します。現在は摩耗核惨事の影響により国民の大半が避難を強いられている緊急時であります。年間被曝線量二〇ミリシーベルト以下という数値につきましても、政府と致しましてはこれを恒久的に適用するつもりはございません。

 また、国内法で定められた数値そのものが、ICRP基準を根拠にしてございますので、国内法から逸脱しているから即座に違法と解釈できるものでもないと考えております。

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