ナミオト




視界を占める砂浜に

  私以外の者は誰もいなかった。

波音。

波打ち際に砂へ埋もれて

       流木が打ち上げられている。

削られる砂の音。

横たわる流木へと歩み寄り

         両手で抱き上げる。

溶かされゆく土の音。

見る間に強ばりは弛緩し

            腕の中でほぅ

             と息をつく。

与えられ奪われる泡たちの音。

そうしてそこには何も、


何もない。  全て、泡へと戻って。



波音

  削られる砂の音

      溶かされゆく 土の音

与えられ 奪われる

         泡たちの   音



 ざん

   ざん、 ざん

         ざん、 ざん

               ざん



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