夜明けの銀翼、夢見るエンジン

作者 馳月基矢(旧PN:氷月あや)

56

20人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

 私は上手くレビューを書くのが得意ではないので、正直上手く書けないと思うが書かせてほしい。

 私は元々「夢見るエンジン」を読んでからこの作品を読んだ。高校に通うのに電車を使うのでその暇つぶしとしてカクヨムを徘徊していたらこの作品と出会った。
 エンジン――その単語一つで私はすぐにこの作品を読み始めた。

 そしてこの作品を読み終えた今、私は純粋にこの作品に惚れてしまった。
 濃厚なストーリーに魅力あふれるキャラクター、更には現実味ある生々しい表現、すべてにおいてこの作品が好きになぅた。

 特に私はこの物語の重要な役割であろう人物、山川久文さんが好きになった。
 彼の言葉一つ一つが私の記憶にとても記憶刻み込まれ、電車の中で食い入るように読み続けた。
 
 とても感動したのだ。

 そして個人的に好きだった描写が「数本の三角スケール。三角柱の形をした、金属製の縮尺定規だ。ひんやりしている。

 製図用の、ガイドパイプの長いシャープペンシル。芯。繰り出し式の消しゴム。

 金属製の三角定規と分度器。オレンジ色の楕円テンプレート定規」


 という描写だ。
 工業高校に通っている私としてはこの描写に少しニヤニヤし、また実際にその日は機械製図の授業があり、スケールやテンプレートを使用したので、またニヤニヤしてしまった。

 長く書いてしまったがとにかく言いたい。

 「この物語は――美しい」

 私も機械系の事を学んでいるものとして、山川久文さんのような技術者になれるように頑張っていきたいです。





















★★★ Excellent!!!

理系の女性に対する偏見や差別、原発に関する間違った自分勝手な知識。

それらに負けずに耐え、ときには真正面からぶつかっていく、機械工学系の大学院生、土屋華が主人公。

読み終わってから気づいたのですが、この小説って色々な要素がギュッと詰め込まれているんですよね。
お仕事ものでありながら、ファンタジーでもあるし恋愛でもある。

機械工学的な専門知識や東日本大震災に関する時事問題的な側面が出てきたかと思えば、溢れんばかりの郷土愛だったり戦争の悲しみが顔を出す。

だからといって、物語が破綻してたり迷走しているわけではありません。それどころか、相乗効果?っていうんでしょうか。互いに引き立て合ってるような印象さえ受けます。すごい……。

個人的には、作品の根底にある静かな熱さがすごくよかったです。
こう、熱量が前面に出てきてるわけではないけど、華の祖父に対する尊敬とか研究に対する熱意とか、そういったものが、物語のあらゆる場面や文章の端っこから感じられました。

あと基樹くんが好き。穏やかなんだけど優しいし芯はしっかりしてるし……。
第六章の、華と手を繋ぐシーンがめちゃくちゃ好き!(思い出し赤面)

さっき恋愛要素もあるよって書いたんですけど、あんまり『恋愛』って感じはないんですよね。あえて言うなら『愛』って感じです。とにかく、すごく素敵なカップルだと思いました。

色々と思うままに書き殴ってきましたが、面白いことは保証します。
少しでも興味を持った方はぜひ!

★★★ Excellent!!!

震災直後の2011年の夏。
終戦間際の1945年の夏。

その二つの夏を揺れるように漂いながら、研究者である主人公の華はそれぞれの現実を目の当たりにしていく。

科学技術は何を為すのか。

戦闘機や原爆。
そして原発事故。

深く、重く、鋭いテーマを、あくまで研究者としての視点で中立的に捉えていく。

自然科学系研究者の動機は2種類ある。
謎を追求していく好奇心タイプと、理想の実現を目指す夢想家タイプ。
華は作中でそんなことをなにげなく言う。
読みながら、強くうなずかせてもらった。
きっと、アインシュタインもボーアもノイマンも、そのどちらかだったんじゃないだろうか。


引き込まれるように読み耽り、ふと不思議に思った。
主人公は技術という中立的な視点を最後まで貫く。
なのに、この物語に心を揺さぶられるのは何故だろう。

そう考えたとき、華が祖父や恋人、周りの人達という「縁」をとても大事に生きているからなのかな、と思った。

★★★ Excellent!!!

機械工学の道に進んだ主人公が、不思議なネジに導かれて(?)戦中の飛行機工場で働く祖父と出会い、自らの志望をさらに強くする物語です。



わりと安易なキモチで読みはじめたのですが、テーマの重さに気づいて完結後に通読させて頂きました。これは重い。。。

技術には豊かな生活を支える功とともに、戦争や原子力災害を引き起こす罪の側面があります。むろん、銃と同じく罪を犯すのは常にヒトであり、技術そのものに善悪はありませんよね。

『ワンピース』のウォーターセブン編にもそういう裏テーマがあったらしく、船大工のトムさんも同じことを言ってました。
ちなみに、司馬遼太郎は大村益次郎を主人公に据えた『花神』で「技術をテーマにした」と明言しており、数学的に計算された軍事技術の導入を扱ったあたりが、発言の意図したところだったのでしょう。

しかし、難しいテーマです。技術をテーマにした物語を面白くするのは二つの理由で難しいと考えています。

一つ目は、詳しく説明するほどに間口が狭まる点。これはマニアの長話を楽しく聞けるかという話に近く、京極堂や探偵ガリレオくらいにキャラそのものを立てて、そのキャラの解説を読者が楽しめるくらいに持っていかなくては、長広舌になりがちな説明で読者を脱落させてしまいます。
二つ目は、人の成長と絡めるのが難しい点。技術はできることとできないことがはっきりしています。創意工夫でなんとかなる部分もありますが、基本的に無理なものは無理。
その一方、マンガ由来の傾向ですが、小説でも明確な主人公の成長を描くものの方が受けがよかったりします。たしかに、Aの問題を解決したら、さらに難易度が高いBの問題が現れる、という単純化された話の方が分かりやすい。
ただ、技術は漸進的に進むものなので、思いつきで一発解決というわけにも参りません。『ミスター味っ子』じゃないんだから。なので、読者にカタル… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

機械工学を専攻する華と、機械技師だった祖父。
華のタイムスリップによって、交わるはずのない時点で二人の人生が交わり、それぞれの分岐点に立つ互いに影響を与え合う——
二人をとりまく環境や抱える悩みは性質こそ違えど、『機械を扱っている』という共通点が強く惹かれ合い、呼応し合う様がとても印象的でした。

緻密で重厚な筆致も魅力の一つです。
2011年の東日本大震災直後の空気感をありありと思い出し、1945年の空襲にひりつく熱波を感じ。
まるでその場に居合わせているかのような感覚を抱きました。

フクシマとナガサキ。
デリケートかつ、理論の話となると複雑で理解が難しい話題にも、当事者としての感情を交えつつ触れられており、非常に読み応えがあります。

フィクションでありながら限りなくリアルに近い、登場人物たちの情熱を肌で感じる物語。
とても面白かったです!

★★★ Excellent!!!

造船技師だった亡き祖父の後を追うように、機械工学の道に入った華。
2011年、夏。大学院博士課程3年生となり、研究者としての一人立ちを目前とするが。

スマートニュース×カクヨム「連載小説コンテスト」の応募作品です。
読者に学びの要素がある小説で、一話2000~3000字程度×30話。
という、非常に難しい条件を持つコンテストにおいて。
誰か一人をその道のプロフェッショナルにして、全て解説させるのではなく。
可能な限り自然な展開の中で、学びの要素をさりげなく散りばめていく。
……まずはもう、よくこの縛りで書き切った、と感嘆します。

私は計画停電が行われなかった地域に住んでいたため。
2011年の夜景の描写に、ああ……と思いました。

華のいとこ真新を主人公とする『夢見るエンジン』では、
真新が(読者の私も)全く知らない祖父の人生が、少しずつ明かされました。
今回はある程度知っちゃってるので、その辺の驚きはどうしても弱い。
しかし、第四章の議員vs華の激論と。
華が研究の道を志した、もう一つの理由は、この作品ならではの魅力だと感じました。

ラストシーン、鳥の名前がそういう形でわかるのが、とても良かった。