18-4 最終決戦へ

 シャングリ・ラ市民防衛軍はペローの死をもって解体となり、バーンズ率いるシャングリ・ラ愚連隊が発足した。

 彼らの最初の仕事はというと、ペローの首を掲げているエイジの写真を撮ることだった。

 それをEFFの残党に送ると、一時間後には、EFFの兵士たちが30機ものコマンド・モーフ『ガルーダ』に乗ってやってきた。

 その掌には4~5人の兵士たち。皆一様にやつれた顔をしていた。

 ペローに代わる民兵たちのリーダーとなったバーンズは、彼らを迎える。殺し合った仲だからか、手厚い歓迎はない。それと暇も。

 なぜなら、数時間後には――コキュートスが開かれてしまうのだ。

 地獄の入口が開き、サイファーという名の悪逆と災厄がスペースコロニー616『シャングリ・ラ』に放たれてしまう。そのパンドラの箱を閉じるための共同作戦を、いがみ合った二勢力は共同で現在練っているところである。

 作戦会議にはアランが出ている。

 会議はトントン拍子に進む。全勢力を上げた総力戦だ。退路は断たれている未来を切り開くために前に進むしか、できない。

 その間――エイジはというと、EFFから譲渡されたコマンド・モーフ『ガルーダ』の調整を黙々と行っていた。コクピットの中でコンソールを叩いている。機体各所を点検し、爆発物がないことを確認する。各部ブースターの状態を確認し終え、今は関節の調子を診ているところであった。

 黙って作業をしているエイジは、EFFからもらった強化外骨格に身を包んでいる。

 新しい強化外骨格の調子は悪くない。旧式のものであるが、着心地はなかなか。前に着ていた強化外骨格よりもエイジは気に入っている。なぜなら、強化外骨格と一体になっているヘルメットがマイクスタンドによく似ているから。

 EFFの兵士たちや、シャングリ・ラ愚連隊の連中はエイジをじろじろ見ていた。不死身のフナサカに注がれる視線には畏怖と尊敬、それと憎悪が含まれている。安心して、整備ができるという訳ではない。

 それでも、サイファーとの総力戦の為に整備を行っている。

 そんなエイジの元に、アランがやって来た。

 重苦しい面持ちで、ゆっくりと。アランもまた、エイジほどではないが視線を投げかけられる。


「エイジ」

「アランか」


 味方は二人だけだ。

 エイジとアランは殺し過ぎた。普通だったら、歩いてはいられない。吊し上げられ、ペローのように首と胴を別たれ、高く掲げられる。

 これが、デフォルトだ。

 今はそうは言っていられない状況だから――殺されずにいる。

 しかし、コキュートスから湧き出るタコの化け物で、クトゥルフに姿形が似ているサイファーたちの始末が終わった後には、しかるべき最後が待っている。そのことをエイジは予感していた。エイジほど勘は優れていないが、アランも薄々気づいている。

 無事に地球に帰ることができるか……アランにはわからなかった。

 エイジはというと――。


「帰れんかもな。俺はやりすぎたみたいだ」


 開口一番、こう言った。


「そんなことを言うなよ。故郷に帰れるはずだ。お前なら――」


 共に重苦しい表情をしている二人は抱き合う。

 恋人がするような長い抱擁の後に、エイジとアランはお互いの銃を交換し合った。

 これは凄惨極まる戦場で行われる親愛の証。戦友同士で拳銃を交換する慣習だ。

 本来ならば、護身用に持ち込んでいる拳銃を交換するのが習わしなのだが、特殊部隊員という特性上、アランとエイジが元々持っている拳銃ではない。拾ったり、奪い取ったものだ。

 それでも……交さずにはいられなかった。

 長い間、供に戦ってきた仲だから。


「アラン、妙な文化だな、これは……」

「元々持っている奴でやるんだがな、これ……でも、悪くない文化だよ、エイジ」


 目を潤わせ、見つめ合った後――二人はまた抱擁するのであった。

 そして、地獄に出撃する。

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