2-4 自爆

 小隊はやむなく、ジョンのわがままにつき合うことになった。


「フォワードはエイジ……ミッドフィルダーはアラン、ディフェンダーはマックだ。俺はゴールキーパをする。サッカーの試合が終わったら帰ろう」


 列の先頭は、反射神経の早いエイジ。二番目は、状況を読むことに長けているアラン。三番目は、絶えず資材搬入倉庫の監視カメラを気にしているマック。そして、最後は誰よりも慎重に歩いている隊長のジョン。

 例の倉庫まで歩いて向かう。ただっぴろい搬入路をたどり、焼死体が積み上げられている場所に。倉庫の中に入る。

 退路、とても広く出入り口が二つあること。中に誰もいないことを確認すると、エイジ・アラン・マックの順番で中へ。

 その場所にコンテナはなかった。照明の光量は普通。だから、よくわかる。焼かれた死体が乱雑に重なり、山をなしていることが。目をつぶり、口を閉じている――安らかな亡者たち。それはミイラのようであった。

 3人は慎重に、焼かれた死体たちの元へ。アランとマックは調査、死体をいじり始める。エイジはそばで警戒。

 二人が屈んで作業をし始めた時、エイジのつま先に死体の頭が。

 つま先に、人の頭。厳密には違う。しかし、どこかで見た光景だなぁと、エイジはデジャ・ビュを感じていた。おそらく見たことのある光景というのは、先ほど見ていたあの“死の河”の夢だろう。彼自身、何も覚えてはいないから余計に気になった。

 マックとアランはというと、焼けた死体に針を刺して調べている。簡易的な検死キットではあるが、これが随分役に立つ。


「20人ほどだな? 向きはバラバラ。こんもりしている……ガソリンの臭いを感知した」

「スキャンしてみたところだなぁ」マックはウェアラブルインタフェースを叩くと、「細菌やらウィルスやらは見当たらないね。でも――興味深いものは出てる。簡易キットしか持っていないのがもどかしいねぇ」

「あ~そうなの。しかし、みんな安らかな顔をしているな? 大方、薬を飲まされて安楽死をしたようだな」

「んだんだ。外傷も特にないしな。アランさんよ、お前さんの言う通り、薬だ。許されることではないが、筋弛緩剤が使われているあたり、良心的というべきか……」


 マックとアランが会話しながら仕事に興じている間、エイジはふと気づく。そういえば、ジョンはどこにいるのかと。悪寒がし、体をビクッと震わせると、ジョンがどこにいるのかを見つけようとした。

 ――その時だった。

 地鳴りのような、轟く音。すぐさま3人は戦闘すべく、姿勢を低く――銃を構えた。それから、ヘルメットのモジュールを叩き、表示されているHUDを確認すると、そこには考えたくないことが表示されていた。

 自分たちが乗って来たコマンド・モーフの自爆モードが起動。それも何も告げず、勝手に。無機質なカウントダウンも何も。これはどうなっているのかと3人が戸惑った時、この倉庫にジョンが飛び込んできた。


「おい! まずい! 敵、敵!」

「数!?」

「エイジ、敵だ!」ジョンは言った。「数はわからんが、近くに民兵が待機していたらしい。あいつらの仲間だよ、本隊! 本隊!」


 奥の方から銃声。それと足音。打ち鳴らされる些末な軍靴が、小隊に生死のやり取りをする時間がやって来たことを告げる。まだこちらには気付いていないようだが、じきに来るはずだ。時間はない。早く決断しなくては。


「コマンド・モーフがぶっ壊れた以上」マックは言った。「中に逃げるしかねぇよなぁ、クソッ!」

「ここに来たくなかったのによ! こんなタイミングで、なんで……クソッ!」


 アランはそばにあった肢体を思い切り蹴った。赤茶けた首は折れ、頭が壁の方へ飛んで行った。

 怒るマックとアラン。エイジはというと焦っているのか、瞳が左右にしきりに動いている。しかし、ジョンはというとヘルメットの下、涼しい顔をしていた。


「外との通信は途絶している状態。ここから中に入るしかない。ここに留まって救助を待つのは得策ではない」エイジは出口を指差すと、「ほら、あそこに出口がある。行くぞ」


 エイジの意見に反対する者はおらず、工業地帯へ赴くことに。

 すぐさま小隊はこの場所から脱出した。

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