家族
隆元様が戻ってから何か考え事をしているようだ。そりゃ当主となれば当たり前の事だけど、何かあったのだろうか?それにしても考え事をしている隆元様もかっこいい…。
「雫。」
「は、はい!!」
「さっきからそこで何をしておる?」
「えっと…。」
考え事をしている隆元様かっこいいなんて思ってたとは言えないよね?
「人は時には言えぬ事もあるか。」
「は、はい。」なんか勝手に納得されちゃった。
「こっちへ来てくれぬか?」
「はい。」
「お主は、父上が1度決めたことを何度も悩むと思うか?」
私は平成で毛利元就公の書状を読んだことがある。長文で戦国武将らしい荒さはなく、人間らしいと思った。
「元就公も人間ですから。」
「ふっ。父上も人間…か。」
変なこと言ったかな?
「父上を人間だと言い切るお主はやっぱりすごいの。」
「え、あ!今の発言かなり失礼ですよね…?」
「そうじゃの。でも、お主ならなんだかんだ許されそうじゃ。」
そう言ってふわっと笑う隆元様はなんだか以前お会いした時の隆景様に少し似ている気がした。
「隆元様、本当に兄弟なんですね。」
「ん?誰とじゃ?」
「隆景様です。1度しかお会いしておりませんが、今の雰囲気が少し似ていました。」
「隆景と…初めてかもな。元春と隆景とだと隆景の方が儂に確かに似ているが…そうか、似ておったか…。」
声を上げて笑う隆元様は
「儂はまだ隆景が幼い時に人質に行き、しばらく会えなかった。そして隆景も小早川に養子に行ってしまい、未だに隆景と兄弟らしいことも出来ておらぬ。故に少しでも似ているものがあるというのはなんだか嬉しいの。」
そっか。山口生活あって一緒に過ごした日は元春様より少ないのか。
「元春は、あいつは見ての通り突っ走るからの。兄の儂からしても、兄弟でもここまで似ないとは思わなかった。吉田郡山城の戦いのこと知っておるか?」
「はい。確か尼子が攻めてきて、籠城の末毛利が勝利した戦いですよね?」
「そうじゃ、まだ元春は10歳じゃったのに、出陣したがって、父上はダメだと言ったんじゃ。なのに父上に無断で出陣しよった。」
「無断で?」
「無断で。」
「そんなこと出来るのですか?」
「普通は出来ないが、あいつはしたのじゃ。」
「どうやって…。」
「止めた家臣に刀を向けた。」
「刀を向けた?」
「刀を向けた。」
「なんていう人だ。」
「そうじゃろう?元春は本当に今も昔もなかなか勢いがあって頼もしい弟よ。」
元春様や隆景様の話の時は見たことのないような笑顔で話す。家族が好きなんだろう。元就公へは家族愛の他に尊敬もかなり含まれているけど。
「お主は…家族に会いたいと思わないか?」
「家族…。」
家族に会いたいと思わないかと言われても。会えないから考えることをしなかった。
「家族のこと考えてなかったか?」
「はい。」
「すまんな、変に思い出させてしまった。」
「いえ。」
「いつか帰れる時までここがお主の家じゃ。だから大丈夫じゃ。こんな安全な家安芸国には他にはないからの。」
「ありがとうございます。」
家族…家族に私は会いたいのだろうか?
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