第28話
ここしばらく、なんだかお腹が痛い気がする。
食べてるときは痛いのを忘れられるから、ひたすら食べてる。
もちろん、お腹の赤ちゃんの栄養にもなるんだけど。
部屋の前がなんだか騒々しい。
お兄さんがこの間見た機械を扱う人たちを連れてきた。
これも「カメラ」らしい。
あってもどうにかするってことはないみたいだけど、なんだか気になる。
でも気にしてても仕方ないよね。
夜になって、だんだんと痛みが強くなってきた。
あんまり痛くて、思わず壁を蹴ってしまう。
壁さんごめんなさい。でも、痛くて仕方ないの。
「もうすぐ産まれるんやな。よっしゃ、ワイならなんぼ蹴ってもええやで」
壁さん、こんな時にカッコつけなくてもいいよぅ……。
どうにか朝までがんばった。
お兄さんに引かれて庭に出してもらう。
少し牧草を食べたら、何かがお腹から出た気がした。
「破水しましたっ!」
カメラを持った人が叫んで、遠くの方にいたお兄さんが飛んできた。
すぐにお兄さんに引かれて部屋に戻る。
戻ったとたんに座り込んでしまった。
お兄さんやお姉ちゃんが支度をしてくれる。
あんまり痛くて、気が遠くなりそう。
「産まれるやで。シュシュ頑張りどころやで!気を確かに持つんやで!」
壁さんが応援してくれる。
普段近づいて来ないはずのもちこちゃんも部屋の中に入って応援してくれてる。
痛くて苦しいけど、わたし、がんばる……。
やっと痛いのが収まったと思って後ろを見たら、赤ちゃんがそこにいた。
おでこにまあるい模様のある赤ちゃん。
無性にかわいくて、ついなめてしまう。
お兄さんもお姉ちゃんもうれしそうだ。
「良かったなあ。無事に産まれたやで。女の子やで……」
壁さん、うれしくて泣いてる。もちこちゃんもなんだか喜んでるみたい。
朝の日差しを浴びた赤ちゃんは、今まで見たどの馬よりもかわいく見えた。
はじめまして、わたしがママですよ。
わたし、サラブレッド。
名前はシュシュブリーズ。
お母さんになりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます