5-8 キュクロテル飯

 前回、キュクロテルの街を散策しました。




「意外な料理が多かったな」




 一通り街の中を散策してみたがベルスターとの違いを色々と感じた。




「意外だったのは、ベルとは違い結構料理系が多いな」




 ベルスターにも食堂やカフェと言った食事処は多くあったけど、基本メニューはスープ・パン・ワインと言ったセットやケバブのようなパン生地に野菜や肉を詰めたサンド系が多く軽食と言ったイメージが強く、冒険者の街感が強かったがキュクロテルは、ハンバーガーやサンドイッチと言った軽食から、パンにステーキ・サラダ・スープと言ったしっかりした定食まで色々あった。


 その中でも…・




「和食や麺類があるとは思わなかった…」




 ここキュクロテルには、和食屋があり、白米やうどん・そばがあったのだ。


 召喚されてすぐの時は、ベルスター城でカレーや白米&ステーキと言ったものは、食べたがベルスターの街では、お米は高級食材らしく、まったく見なかった。


 だが、キュクロテルでは、所々白米を主食にしているお店があった。


 麺類に関しては、この世界で初めて見た。


 名前も、うどんとそばだったし多分昔の勇者が伝えたのだろう‥‥




「何喰おうかな?」




「ほむら~」




 俺が飯のことを考えていると遠くから香蓮の声が聞こえてくる。


 考えるために下げていた頭を上げ周囲を見渡すと、こちらに手を振りながら近寄ってくる香蓮の姿が見える。




「どうした?」


「焔こそこんな所でどうしたの?」


「ん?あぁ昼飯どうするかで悩んでたんだよ」




 香蓮は、言いたいことを理解したのか頷く。




「分かる、だってここカレーにうどんにラーメンに寿司まであるしね」




「香蓮…今なんていった」




「ん? カレーにうどんにラーメンに寿司まであるってところ?」




 俺は、無言で腕を振り上げた。




「ここにあったのか俺の楽園」




 俺の行動について行けず目が点になり固まっている香蓮と俺のことを白い目で見ている街の人々を無視し感動する。




「あ~焔自身が見つけるんじゃなくて香蓮からでバレちゃったのか~」




「おう、日影お前の言っていた俺の好物って寿司の事だったのか」




 遠くからこちらに近づいてくる日影に問いかける。


 香蓮もそうだったが日影が現れると周囲の男たちの視線の一切を一瞬にして奪うは見ていて面白いが複雑な気持ちになる。




「寿司もそうだけど、ここ大まかな和食が揃ってるから言ったの。焔、寿司だけじゃなくうどんやそば、ラーメンとかも好きでしょ?」




「魔王討伐と言うより、食文化的に此処が欲しい」


「その気持ちわかる日本に一番近い国が敵勢力とか落とすしかないよね」


「いや、純粋にここに住めばいいんじゃ…」


 周囲の男たちが香蓮と日影を囲ってる俺に殺意を送ってくるがガン無視で日影や香蓮と話す




「よーし、んじゃ飯は、寿司にでもするかな、香蓮案内お願いしてもよかですか?」


「案内だけなの?」




 やばい、時々出てくる香蓮の甘えが可愛すぎて死にそう。




「はぁんなわけなかろうに、香蓮も日影も一緒に食おうぜ」


「それじゃあ、お言葉に甘えてご一緒させていただきましょうかね」


「ありがと焔」




 香蓮の案内をへてすし屋に着いた。すし屋の外見は、老舗店のような暖簾のかかったお店で暖簾には、漢字で鮨と書かれていた。


 礼儀に倣い暖簾を上げ店の中に入る。




「3人だが開いてるか?」




 魚を捌いている大将に聞きながら店内を見回す。


 客は全く居らず、ちょうど大将の正面で鮨を食べている女性一人ぐらいしか目視で確認できない。




「開いてるぞ」


「隣、座りますか?」




 大将の言葉につなげるように女性が隣を示す。




「お言葉に甘えてそうさせてもらうかな」




 俺は、堂々と、女性の隣の席に座る。


 香蓮と日影は無言で俺の隣に座る。


 座った俺たちにお絞りを渡してくる。




「大将、とりあえずオススメで握ってくれ」




 俺の発言に目を丸くする。




「ほう、そこの嬢、以外にも俺のことを大将と呼ぶ人がいるとはな」


「えっ寿司を握る人の事って大将って呼ばないの?」


「焔、それテレビの見過ぎだと思う…」




 大将の発言に驚き突っ込まれていると隣の女性が笑い始める。




「ははは、すまない笑ってしまって、君たちが面白すぎて」




 女性は、ツボに入ったのか、目頭に涙を浮かべながら笑っている。




「なんか心外だが、女性の笑顔はいいものだから許そう。」




 俺の発言に色々な視線を感じたが無視だ無視。




「ふぅう久しぶりに笑った。ここで会ったのも何かの縁だ。自己紹介紹介しようか。私の名は、グリード。」




 グリードと名乗た女性の説明をしよう。


 身長は、香蓮と日影の間ぐらいだから目測165cmぐらいだろう髪は、紫で肩のところで切りそろえられている。


 スタイルもよくスリットから見える脚はエロく胸も大きい…正直言ってエロい。




「俺の名前は焔」


「私は、日影」


「私は、香蓮よろしく」




「グリードって言われるとどうしても欲深いのイメージになってしまうな」




 俺の言葉を聞きグリードが一瞬ムスっとしたが直ぐに治る。




「どういう意味か聞いてもいいかな?」




「おっと気を害したというのならすまない。飯が来るまでの時間つぶしに話してやるよ。」




 俺は、お茶を少し含み口を潤す。




「グリードってのは、人の七つの罪の一つ強欲の意を持っていてな。昔、アニメで強欲だが仲間を見捨てないいいキャラが居てな。」




 その後グリードの質問を答えながら鮨が出るのを待った。




「へいお待ち、今日のオススメのマグロード・シャケイオス・デビルズフィッシュの3貫握りだ。」




 大将が出した握りは、マグロとサーモンとイカの握り各3貫づつだった。


 俺たちは、醤油をかけ一貫手に取り口に入れる。


 口の中でネタが溶け、口の中全体に海鮮の香りが広がった。




「ヤッバうま」




 俺たちの発した言葉はそれだけだった。


 その後は、淡々と鮨を食べ、注文するという作業に変わっていった。


 ~焔達食事中~




「ふぅ~食った食った」




 俺たちは、お茶を飲み、口の中の油を落とす。


 食べたネタすべてが新鮮で程よく油が乗っていておいしかった。


 中でもイカは、厚く切られているはずなのに透き通るような透明感を持っており醤油を垂らすとシャリまで見えるほどだ。


 味も甘く歯ごたえもよかった。




「大将、最高だったよ」


「おう、ありがとな」


「その体のどこにそんな入るスペースがあるんだろう…」




 その後は、食後の会話をしながら会計を済ませ、店を出る。




「んじゃ、今夜、お邪魔するからグリード様」

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