4-7-5 メリソスダンジョン⑤

 どうも焔です。前回決勝戦:焔VS日影が始まりました。




「あはははは」




「あっははははは」




 爆発の煙の中で俺と日影は笑う。




「やっぱり楽しいわ」




「まだ終わってないよ」




 日影は後ろに飛び距離を開け新しい武器を召喚しようとしている。




「来い、幾千の斬撃とともに敵を黄泉に落とす双刀 イザナミ」




「来なさい嵐とともに幾千の斬撃を浴びせし双剣 カムイ」




 どうも思考が同じなようで再度同じような武器を召喚した。…どうせこれが続くんだろうな…




 俺の召喚した双刀 イザナミは二本の黒い刀で闇に交じり影に忍び敵を無数の斬撃で屠る刀。




 双剣 カムイは風をイメージさせる緑の双剣で一振りすれは風が荒れ狂い敵を切り刻む剣




「せいや」




「はっ」




 互いに獲物を幾度となく振る。だが一度も武器が使用者に当たることがなく淡々と剣と刀がぶつかり合う音だけが響く




「「パキンッ」」




 互いの武器が折れる。




「次 来い 全てを燃やし灰燼に帰す神斧 ベリアル」




「なら私は、来い、黄金の輝きを持ちし怪斧 ラブリュス」




 日影のやつわざと同属の武器を持ってきやがったな。




 俺の召喚した神斧 ベリアルは、切った対象に地獄の業火を浴びせる斧




 怪斧 ラブリュスは言わずもがなアスことアステリオスの斧




「そい」




「せい」




 互いに気が抜けそうな掛け声と共に斧を振る。互いに持ち主の力に耐えられなかったのか一撃で砕ける。




「あぁーめんどくせぇ 来い我が最強の武器 ブラッドメタル」




「やっぱり最後はこうなるのか…来て私のブラッドメタル」




 互いの手にはいつの間にかブラッドメタルの篭手がはめられていた。




「こっからは完全な実力勝負だぞ」




「楽しいね焔♪」




 この後俺と日影は互いの体を求めるかの如く多種多様な武器を用いり、技術を使い相手を殺そうとした。




 *********************************


 どうも初めまして香蓮です。


 現在、焔と日影が絡み合うかの如く互いを倒そうとしていますが第三者からすると置いてけぼり感がとてもします。


 さっきまで剣で切りあっていたかと思うといつの間にか武器が篭手に変わり近接戦をやったり瞬きの間に距離があき銃撃戦になったり目まぐるしく戦闘方法が変わっていく。


 多分普通の人たちが見たら二人のことを怪物と呼ぶのだろう。


 まぁこんな戦闘すればその時点で怪物なのだがそんなものが霞むほどヤバいことがある。それは、幾多の攻撃全てが二人には当たらずすべて相打ちになっている点だ。


 どんな、偉人であっても1000を超える攻撃全てが相打ちにすることは出来ないだろう。


 だが二人は、息をするかの如くそれを成し遂げる。




「私は、普通で居たいな」




「香蓮あきらめて、焔の血を飲んだ時点で君ももうこっちだから…」




 横で二人の戦いを見ていたアスが肩に手を置き首を横に振る。




「だよね~泣きそう」




 そんな私たちの事など意識の外で、二人の戦いは佳境に向かっていた…


 *********************************




「楽しいな日影」




「そうだね焔、このままこの時間が続けばいいね」




「それは、勘弁願いたい楽しい時間は終わるから価値があるからな」




 全ては、終わるからこそ美しく、綺麗で、感情を動かされる。




「ってことは、もう終わらせる気なんだね」




 日影は俺の意思を理解したのか一旦距離を取り姿勢を正す。




「とりあえず、このままやっても多分終わらないし最後はやっぱり拳これでしょ」




 拳を見せながら日影に意図を見せる。


 日影は理解したのか頷きブラッドメタルを篭手に変える。




「こんな静かな戦い久しぶりだなぁ」




 俺と日影は、初めのように静かに近づきながら拳に力を籠める。




「せいっ」




「そいっ」




 俺たちは、互いの息が感じられるほど近づき腹に一発ぶち込む。


 そう、俺の提案した最後は、互いに最高の腹パンをすることだった。




「「ぐふぅ」」




 俺も日影も口の端から血が垂れる。


 肉体的損傷を言うなら腹にある内蔵の8割・肺が破裂+肋骨・胸骨が折れ、腰骨に罅がはいった。




「最高だよほんと、俺のパートナーは日影だけだな。」




「私も同じこと思った。」




 俺たちはそんな他愛もないことを言いながら倒れた。




「焔・日影引き分け よって勝者無し」




 薄れゆく意識の中香蓮の審判が聞こえたような気がした。




 *********************************


 どうも香蓮です。


 焔と日影が相打ちになって今、アスと一緒に横にして安静にしています。


 移動させようとしているときは、二人とも致命的な傷があったはずですが、もうほとんど完治しています。


 この二人はもう人間じゃないんじゃないかなって思います…あっ日影は神だった。




「アス、この後どうする?」




「とりあえず、主と日影が起きるまで休憩でいいんじゃない?」




 焔たちが起きるまでのことを話し合いながら時間を費やしていると。




「「あはははは」」




「面白かったね、姉様」


「そうだね 兄様」




 急に幼い少年・少女の声が聞こえる。




「ヘンゼル・グレーテル⁉」




 今、二人と戦える戦力もないし、二人の力が未知数だから出来るだけ戦いたくはないんだけど。




「戦わないから大丈夫だよ」


「戦わないから大丈夫ですよ」




 香蓮は双子に言われ自分が臨戦態勢に入っていたことに気づく




「香蓮、主たちが動けないからそうなるのは、わかるけど落ち着いて」




 アスの言葉で少し冷静になり、再度腰を下ろし座る。




「で、何のために来たの?」




 私の反応に面白さを感じたのかニコニコしている双子。




「さっきも言ったけど戦闘しに来たのでは無く」


「お知らせを伝えに来ただけだよ」




 双子は、ニコニコしながら私の横に座る。




「なんで貴方達まで座るのよ!」




 普通に考えて敵対者が横に座られたら警戒しないわけが無い。


 私も双子から少し離れアスに近づく。




「香蓮、警戒しすぎだよ。」




 アスは、私を安心させるかのように肩を抱いてくる。




「ごめんね、アス」




 自分を落ち着かせながら深呼吸をする。




「香蓮さんは心配性なんですね。」


「さっきも言ったけど僕たちはお知らせを伝えるために来ただけだから戦闘などはする気がないよ。」




 双子は手を上にあげ何も持ってないことを主張する。




「んで、お知らせとは何?」




 さっきから双子が言っているお知らせが気になり双子に聞く。




「それは、焔と日影さんが起きたら教えるから少し待っててね」




 双子は、そう伝えると色々なおもちゃを取出し、遊び始める。




「こう見ると普通の子供なのにね」




 アスはまだ、私の肩を抱きながらも話しかけてくる。




「そうだね、今思うとなんであそこまで私は、二人のことを恐れていたのだろう?」




 今考えると、双子は何もしていない。ただ、敵である可能性があるだけで警戒をしていたんだ。




「ねぇ、ヘンゼル・グレーテル、お話、しない?」




 私は、警戒を解き、少しでもヘンゼルとグレーテルのことを知ろうとする。




「いいよ、ねぇ姉様」


「いいですよ、ねぇ兄様」




 二人は遊んでいたおもちゃを消しこっちに向き合う。


 警戒を解き客観的に見ると双子はとてもかわいいというか綺麗だった。


 ヘンゼルもグレーテルも色白で髪型が一緒ならは見極めるのは、難しいだろう。


 ヘンゼルはミディアムヘアーで襟足に当たるか当たらないかぐらいの短さで幼さが少し感じられる。


 グレーテルは腰ぐらいのロングで動かなければ人形と見間違うぐらいかわいい。




「二人は、なんで24の獣になったの?」




「知らない、いつの間にかなってた。」


「知らないわ、いつの間にかそうなってました。」




「なら、親とかは?」




 地雷を踏んだのか少し悲しいような顔をした双子だがすぐにニコニコする。




「チャウシェスクの落とし子」




 ヘンゼルが小さく呟く。




「っごめん」




 ヘンゼルの言ったチャウシェスクの落とし子とは、ルーマニアにおいて、チャウシェスク政権下で施行された「離婚・堕胎の禁止」の法令によって急増した育児放棄した末に生まれた、大多数に上る孤児のことである。


 多くの者が人身売買や路上生活など子供には酷な生活をしていたという。




「そんなことより今度は、お姉さんたちのことを教えてよ」


「いい案ね、兄様」




 双子は、何も無かったかのようにニコニコしている。




「聞くだけは、平等じゃないからね」




 この後、私とアスは、ヘンゼルとグレーテルの質問攻めを受けました。


 *********************************




「んっはぁ~あ」




 俺は欠伸をし、目を擦りながら体を起こす。




「あっおはよう、焔。」


「おはよう主。」


「おはようございます。主様。」


「おはよう主様。」




 みんなから朝の挨拶が来る。




「おう、おはよう…はぁ?」

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