第一話 刃と琴弾き ④
「朗報と悲報が一つずつございます」
「どちらからでも構わん。話せ」
月の国の
「北部について。
「狼ども、味方に付けると心強いものだな」
「はい。しかし彼らとの同盟は陛下の御威光あってのもの」
「
「
「芳しくない、とは
「既に命は下しております」
そう言いながら、手に持った紙束の一つを開いて見せた。そこには部隊の名称と、将の署名が列挙されている。その兵数は四万に及んだ。しかし、君主の表情は険しいままだった。
「して、あの噂の
「それが、調べれば調べるほど、真実であるように思えてなりません。それにあの男が蘇ったとすれば、これほどまでに苦戦を強いられることにも
今でこそ強盛を
「よもやあの者……ぐっ」
「陛下、あまりご無理をなさらぬよう……」
大宰相は速やかに
月の国は突如として、北と東の二面からほぼ同時期に侵攻を受けた。吟王はそれに対処するため、ここ数カ月の間昼夜無く働き詰めであった。そのことが与えた心労は如何程のものであったか。王の白髪も、深く刻まれた皺も、およそ年相応のものとは思えぬ様相を呈していた。
(労しや、我が主……)
近臣
「ご子息が、いま少しでも王らしくなられていたら……」
女は我知らず
「そう
君主は枕から首を僅かに
「先ほどの言葉、
「よい、よいのだ。余は罰する気などない。しかしな、これはとても……難しい問題なのだ」
そこまで話すと、吟王は目を閉じ再び床に
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