風、すきとほる時代

 レイキャビクから――ION SUPPLY DRINKを、――電解水を飲む、――●名称:清涼飲料水、――●原材料名:砂糖、果糖ぶどう糖液糖、果汁、食塩、酸味料、香料、塩化K、乳酸Ca、調味料(アミノ酸)、塩化Mg、酸化防止剤(ビタミンC)――を、――飲む、――●内容量:500ml、●賞味期限:ボトル上部に記載、→19.01.31――●保存方法:直射日光・高温をさけてください。を飲む、――●製造者:大塚製薬株式会社、を飲む、――製造所固有記号:賞味期限の後に記載、→OBF、らしい。――●栄養成分表示100ml当たり:エネルギー25kcal、タンパク質・脂質0g、炭水化物6.2g、ナトリウム49mg、カリウム20mg、カルシウム2mg、マグネシウム0.6mg、が身体の中にカラダの中に吸/収されてゆく、――●電解質濃度 陽イオン(mEq/l)Na+ 21 K+ 5 ……もうこの辺で、つかれがたまりまくり給い候、わかりみがある、へオキシステロイド、最果タヒは電脳クラゲの夢を見るか、……そうしてこのペットボトルは捨てられた。


 意味不。忘れている、筆圧。感知するべきは、ずっと長いこと使っていなかった歯を動かすときの、汚さ。ずる賢さ。私はそれを起き抜けの布団の中で思いやって、歯を磨く。舌癌になったときのフロイトのような、死に対する精緻な分析が必要かもしれない。私は『深海生物ファイル』のページを開ける。開き慣れた「ラブカ」の項目。「サメらしくない深海のサメ」。

 講師時代、私はとある魚好きの生徒に、これを貸し与えていたのだった。彼は東京海洋大学を目指すことに決めていた小学生。と言っても、4月になった今、彼が小学生であるという保証はないけれども。恐らくは中学生だろう。もちろん、私が職務を遂行していたとしても、していなかったとしてもだ。

 その彼が、以前通っていた塾を嫌がった理由の一つに、塾で出された問題を解いている最中にわからないところの調べ物をしていたら、とある教師に、こんな風に罵られたという。彼は口元を横に引っ張って、その教師の真似をしてみせた。

「お前は人間の屑だ。微塵も役に立たないことを調べやがって。そんなんだから成績が上がらないんだ。もう出て行け」

 彼はそう言われたときの状況をこう述懐した。

「そいつ、すっげー歯、汚いんだ。歯が、コーンクリームみたいに、真っ黄色で、いつも唾を吐いているんだ。その口で、自分に向かって喋って、吐き散らした内容が、ひどくて、思い出すだけで、頭がガンガンしてくるんだ。もうこんなところには絶対通うもんか、って思ったよ」

 話は変わるがラブカの顎が、比較的古代のサメに近いと思われていたのはご存知だろうか。いわゆる普通のサメが頭が突き出ていて、口はその後ろにあるのに対して、口が顔の先にあることによって、ラブカはクラドセラケという古代のサメを彷彿とさせ、それに似ていると思われてきたのである。しかし実際に文献を確認してみると、ラブカの顎と頭の関節の仕方は、現代的なサメに近いということが判明している。

 私が開けたのは、そんな思いの詰まったページだったのだ。と、言うほど思いは詰まっていないかもしれないが。


 講師時代の私は、周囲には不思議な人と見られていたらしい。無論、こんな推測も、太古のサメの生態を想像するようなもので、現実的な意味は全くないのだが。

 証拠はある。私はとある講師に、お前って不思議な奴だよね、と言われたからだ。しかし実のところ、私は単に不真面目な講師であっただけで、不思議な人ではなかったし、それにそのことも大して印象には残らなかったのだ。


 人生は選択の連続だ。ある選択は死に直結し、ある選択は生に直結する。ある一日の間歯を磨かなかったことが原因で死に至る場合もあれば、ある一日の睡眠のおかげで生き永らえることもある。


 ある一日のことだ。私は自分を観察するために外に出かけた。列車に乗って、郊外へと出て行った。そのときのパオンパオンという踏切の音を想像することは容易い。しかし、経験と判断によって、脳から遮断されたその想像力の外側に出ることは、難しい。ある人には、ファンファンと聴こえるその警笛音が、ある人にはジンジンと聴こえ、ある人にはポンポンと聴こえるだろう。またその音階に対しての色付けも難しいだろう。しかし少なくとも私に聴こえたそのときその瞬間の音は、F#だと言っておく。そう言っておくことで自分が自分を観察するという責務から逃れようとするのを断ち、おいそれと好奇心から抜き足で線路沿いへと繰り出そうとするのを、少なくとも一時的には防いでくれるからだ。

 観察へと戻ろう。私は少なくともある種の内的な四角形の中にいることがわかる。そして自分をそこから連れ出そうとしている。しかしながらそれはそう簡単にはいかない。物語の舞台と内実が、世界を語ると同時に露呈してしまい、辻褄が合わなくなってしまう。しかし実のところ、辻褄合わせで世の中ができていれば世話ない。言語が壁となって、世界を構築するに至るまでの過程を描写していくことこそが、この物語の目指すところである。しかしその目標を立てた時点で、もはや物語は放棄されてしまっているのではないか。


 そのとき私は眠っていた――ずっと後になってから、私が眠っていたことがわかったのだ。あらゆる運命が私を放擲していた。


 そのとき私は眠っていた。言葉の壁という壁に阻まれながら、それもその壁は内的なものでありながら……If anything is capable, riverrun still fall rain. こうして気取った言葉を吐き捨てたその少年は、言ったのだろう。Might be in time, might me in time. 複合的な、複雑な英文法を駆使するのではなく、ただ感性の赴くままに書く。Everyday, I work in the window. 毎日が素晴らしい! Meek, week, still fall rain, after the part of you. か擦り切れてダメになった英語を駆使してみる。Right away, call brighter day. Exaccuration will fine. But now, but now. Still remaining falling down, another side of you have change your mind. Broken chair awake memory and melody. Importance of the factory of the plant, that might be twilighter and twilighter.


Transpacifc rim are innor corner of hedge. Sunset sets sattlement of border of life. Poemicro-scope shattered flats thundered in ice aged child, glitter amp of white snow. 俗世の評論から隔絶されたby way of pataphysy, in geniue of spirit in my mind of blood of color of blossom, on the top of the bottom. That's called "desdeny."

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る