眼裏
「めうら」と読むべきか? 「がんり」と読むべきか? こんな風に悩んでいるのも、これが榊の下の名前だからである。語り手としての資格を喪失しないように、上手く呼び名を付けて、呼んであげたいという気持ちが、私にはある。榊眼裏、榊眼裏。榊メウラ、榊ガンリ。果たしてどちらが正解なのか?
しかし、呼び方によって語り手としての資格を喪失するということはないかもしれない。それはというのも、これは夢だからである。夢だと思おうとしている。夢だと思っていると思っている。夢だ。夢。夢。夢の嵐の中で、夢の吹雪の中で、夢の新緑の中で、夢の枯れ葉の中で。夢でありたい、と思い続けていた。だから、夢になるだろう。
私の夢の中には、無重力が流れている。"What's Next"というH ZETTRIOの曲が、私の夢の中には流れているのだ。それはNECの宣伝の曲に使われている。ヘッジホッグのような、あるいはシン・ゴジラのような棘が、画面上に映し出され、その画面を釘バットで叩き割る、そういう動画をアップしたが反響はなく、絶望しか聞こえてこなかった、という夢を見た、ような気がする。気がするだけで、あとは夢である。
夢の無重力の中では、見ている夢が画面に映し出されたものになり、画面が切り替わり、切り替わった画面が叩き壊され、壊された破片が飛び散ってそれを目で追いかけるとヘッジホッグになり、飛び跳ね、回転し、裂け、破れて散り散りになり、ゆっくりと画面に戻り、画面が消え、明滅し、光のない、光のような光になる、そんなぼんやりとした、観念、観念のような概念、概念のような光、光がうっすらと消え、見えなくなった。閉じられた眼の中で。それが意識されたとき、目覚めが近くなったのがわかった。
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