第25話 2節 オリンポス惑星の住人(6)

「タリュウの中には簡易ベッドしかないけど、ケンの治療はできるの、サーヤ?」

ジリュウの中にいるミウが、タリュウの中のサーヤにたずねると、サーヤが答える。


いたんでいるケンの首の骨と神経に、わたしの治癒ちゆの力を当て続ければ、数日で治るはずよ」


「あー、よかった。ケンはじきに元気になるね。あっそうだ、マリもケガしてるんだから、横になって眠っていた方がいいよ。」

ジリュウの中のミウが、タリュウの中のマリに語りかけた。


「どうして? ケンのことが心配だから眠れないよ」

マリが聞き返すと、ミウが楽しそうに答える。


「ケンは、サーヤのことが好きだから、サーヤの夢を見ながら眠っているかもしれないよ」


「そうなのか・・・そう言うミウは、ヒロのことが好きなんだろう?」

シリュウの中にいるロンが、ミウをからかう。


「ロン、変なこと言わないでよ。ヒロが困っているじゃないの」

ミウとロンのやりとりを聞いて、ヒロがつぶやく。


「人が人を好きになるのは、なぜだろう。みんな友達でお互い好きなんだけど、それとは別の感情だよな」


ミウ、ロン、マリは、それぞれ答えを考えついたが、口に出すのをためらっていた。


四匹のリュウは、影宇宙の中を一時間くらい上昇し続けた。

しばらくして、ジリュウの中にいるカゲマルが、そわそわし始めた。


「カゲマル、どうしたの?」

ミウが気づいたときには、ジリュウが他の三匹の竜たちから離れてフラフラしていた。


「ジリュウ、目を覚ましてっ」

ミウがさけんだと同時に、宇宙から強い光の衝撃波しょうげきはおそってきた。


「キャーッ、痛いっ」

瞬間的に吹き飛ばされたジリュウの中で、ミウが何回転もして体のあちこちをぶつけた。


忍者のミウでも避けられないほど強い衝撃だった。

しかし、猫のカゲマルはなんとか持ちこたえた。


「あー、手も足も痛い・・・、あれ、左手の感覚がない・・・」

ミウは次第に意識が遠くなっていった。


カゲマルがミウの手や顔をなめて、元気付けようとするが、ミウは意識を失ってしまった。

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