余談四 緑眼の怪物

 フィアは美人である。

 勿論彼女の正体はフナであり、人間にしか見えないその身体は水で出来た作り物なのだが、フィアの正体を知らなければ外見こそが『フィア』のイメージだ。黄金に煌めく髪、女神が如く豊満なバスト、繊細でほっそりとした手足、美術品のように完璧なラインを描くくびれ、崩れる事のない愛らしい顔立ち……女としての魅力が全て詰め込まれている。

 反面性格や価値観が人間とはあまりに異なるが、他人に自分の考えを強いるタイプでもない。理解は出来ないがそれが好きなら良いんじゃない? というスタイルなのだ。なのでちょっと変な子とは思われるが、それ以上には中々ならない。そもそも根底の価値観なんてものは、余程長く付き合うか非常時でもない限り分からないものである。傍から見たフィアという『少女』は「ちょっと変わってるけどすっごい美人」でしかない。

 なので異性の目には大変魅力的に見えるようで。

「むむむむむむむむむ……」

 今から下校しようとしていた花中は、眉間に眉を顰めながら唸ってしまった。

 夏休みが終わって数日が経った九月初旬。外の気温はまだまだ夏模様で、熱中症に気を付けねばならない暑さがある。直射日光の届かない高校の玄関内でも、かなり蒸し暑い空気が辺りを漂っていた。長居をするには適さない場所だが、花中は下駄箱の前から動こうとしない。

 何故なら、下駄箱の中に一通の『手紙』が入っていたのだから。

「花中さん何故下駄箱に向かって唸っているのですか?」

「……また、フィアちゃんにラブレターが来てる」

「私に?」

 はい、と言いながら花中は下駄箱の中に置かれた手紙をフィアへと無造作に渡す。白を基調としつつ、花柄が描かれたお洒落な封筒だ。表面にはこじんまりとしていたが『フィアさんへ』の文字がある。どう考えてもフィア宛の手紙だった。

 フィアに宛てた手紙が花中の下駄箱の中にある理由はとてもシンプル。フィアはこの学校の生徒ではないので、彼女の下駄箱は存在しないからだ。そのため何時の間にやら、何時も一緒に居る花中の下駄箱が窓口となっている。

 花中から手紙を受け取ったフィアは封筒を開け、中の便箋を取り出して読み始める。最初無表情だった顔は二秒で顰め面になり、五秒で飽きたのか読むのを止めて肩を竦めた。

「確かにラブレターですねぇ。好きだのなんだの書かれてましたよ」

「ほんと、フィアちゃんモテるよね」

「……前々から訊きたかったのですけど花中さん私にラブレターが来ると不機嫌になりますよね。なんでですか?」

「べ、別に不機嫌じゃないし」

 ぷいっと頬を膨らませながら顔を逸らし、花中は。言ってる事とやってる事が真逆である。フィアはますます困惑した様子だ。

「それで? 今回は会ってあげるの?」

 そんなやり取りをしていると、不意にちょっと離れた位置から会話に混ざる声がある。

 ミリオンだった。ミリオンがフィアに面会の意志を尋ねるのには理由がある。基本色恋なんて興味もないフィアは、ラブレターどころか面と向かっての呼び出しにも応じないからだ。「面倒臭い」からという理由だけで。色恋大好きなミリオンとしては、とても残念な答えであろう。

 尤もフィアは尋ねてきた相手の気持ちなど理解せず、自分の本心に従うのみ。だから答えは何時だって即答……なのだが、今日のフィアは口を閉ざしてほんの数秒考え込む。

「そうですね。偶には会ってみますか」

 そして普段と異なる答えを返した。

「あら、珍し「ど、どどどどどういう事フィアちゃん!?」

 この答えにミリオンは驚き、それ以上に花中が驚愕する。無意識にフィアに掴み掛かり、動揺しきった声で詰め寄った。さしものフィアも花中の動転ぶりに驚いたのか、少ししどろもどろになりながら答える。

「どうもこうも偶には会ってみようと思っただけなのですが……思えば何時も面倒臭がって会わずにいましたけど恋というのがどんなものかちょっと興味を持ちまして。今回は中々珍しい相手のようですし」

「だ、だふごっ」

「うんうん、良い事よ。やっぱり何事も経験よねー」

 ダメ、と言おうとした花中の口を素早く塞ぎ、ミリオンはフィアの意見を肯定する。花中は必死に藻掻こうとしたが、筋繊維にミリオンの個体が入り込んで固定しているのか、ぴくりとも動けない。拘束するにしても徹底的過ぎる。

 なんとかこの拘束を解きたい花中だったが、その気になれば人類を容易く滅ぼせるミリオン直々の束縛だ。たった一人の小娘に破れる訳がない。

「それで? 何処で待ち合わせ?」

「えーっと放課後に体育館裏でとありますね。四時半と書いてますからあと三十分はありますか」

「あら、ベタな待ち合わせ場所。そこがまた初々しくて可愛いわねぇ。ちなみに、私があの人に告白された場所は何処だと思う?」

「知る訳ないでしょう。あと興味もないので言わなくて結構です」

 無力な花中には、フィアとミリオンの会話を止める事は叶わなくて――――

 ……………

 ………

 …

「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……!」

「で? なんで花中はこんな不機嫌な訳?」

 木陰の中で歯ぎしりをする花中を、ミィが指差しながら訪ねた。花中の隣に立つミリオンは、片手で口を押さえながら笑いを堪えるばかり。

 下駄箱のラブレター騒動から少し時間は経ち、花中は今、体育館裏にある木々の影に身を隠している。中々正門から出てこない花中達を探してやってきたミィも、同じく木の陰に潜んでいた。蝉達の声が喧しいが、話をするにも、話を聞くにも支障はないだろう。飛び回る蚊なんてどうでも良い。

 花中だけが目をギラギラと光らせながら、一匹だけ木陰の外で棒立ちしているフィアを見ていた。

 フィアは今、ラブレターの送り手が来るのを待っている。

 花中はそれを監視していた。フィアは色恋に興味がない。ないからこそ、恋愛的な意味での良い人と悪い人の区別が付かない筈だ。もしもやってきたのがちゃらんぽらんな男で、フィアを騙そうというのなら……ミリオンとミィに頼んでボコボコにしてもらわねばならない。いや、そうでなくても一度はボコボコにしてもらうべきか。そのぐらいの覚悟がないのにフィアと付き合うなんて認めてなるものか

「さかなちゃんが盗られないか心配なのよ。この子、割と嫉妬深いでしょ?」

 などと娘の婚約者を前にした父親が如く理不尽な考えを抱く花中だったが、ミリオンがズバッと指摘した一言で顔を赤くする。ミィは納得したように「あー」と声を漏らしたので、ますます恥ずかしくなった。

 そうだ。これは本質的には嫉妬である。あーだこーだといちゃもんを付けて、なんとかフィアを独り占めしたいという独占欲の現れに過ぎない。

 フィアの独占欲に苦笑いを浮かべる事もあるのに、いざ自分が当事者になればこの体たらく。なんとも身勝手な自分の気持ちにほとほと呆れ返る……呆れ返るが、それを凌駕する嫉妬が胸に渦巻く。

 身勝手結構、醜くて結構。嫌なものは嫌なのだから仕方ない。そして春先の事件をきっかけに、自分の気持ちにもっと正直に生きる事にしたのだ。

 なのでやってきた輩の問題点を見付け次第、花中はミリオン達に『制裁』を依頼する事に躊躇はなかった。今年の春よりも前なら思い留まったかも知れないが、経験は人を良くも悪くも変えるものである。

「……なんで花中さん木の陰に隠れているのでしょう? 隣に居れば良いのに」

 なおフィアには隠れている事なんてとうにバレているが、他人に見られていようがいないが態度を変えないのがフィアの良いところ。これからやってくる『不埒者』にバレなければ問題ない。

 かくしてフィアから少し離れた位置で花中とミリオンとミィが待っていると、しばらくして建物の陰からひょっこりと人影がひとつ現れた。人影はフィアの方を見ると、慌てた様子で駆けてくる。

 息を切らしながらやってきたのは、少し小柄な女子生徒だった。襟元にあるリボンの色合いからして、一年生のようである。小柄といっても花中より背は高そうであり、胸に至っては圧倒的大差を付けていたが。長く伸びた髪は目許に掛かっていて、なんとなく人見知りが激しい、大人しい子のように見えた。フィア達と出会う前の自身との相似点を見付けてしまい、花中としては少しむず痒くなる。

 ……ところで、何故やってきたのが女子生徒なのだろうか?

 ついでに、何故女子生徒はフィアの顔を見ながらほんのり頬を赤らめているのだろうか?

「ご、ごめんなさい。待たせてしまって……」

「何故謝るのです? 私が勝手に待ち合わせ時間よりも前に待っていただけなのですが」

「え、あ、えと、それは、そうですけど……社交辞令、みたいな?」

「はぁ。そうですか」

 フィアのマイペースな反応に、女子生徒はしどろもどろ。しかし木陰に隠れたまま思考停止している花中に比べれば、遙かに冷静と言えよう。

 まずは落ち着こう。花中は心の中でゆっくりと独りごち、改めて現状認識を行う。

 フィアはラブレターをもらい、此処に呼び出された。花中はラブレターを読んでいないが、フィア自身が言っていたので間違いない。待ち合わせ場所は此処体育館裏。時間は、あと十分ほど早いが午後四時半。

 そしてやってきたのは女の子。

 ……Why?

「え、えと、あの……あの、手紙にも書かせてもらいましたが……その、好きです! 愛しています!」

 困惑する花中に、女子生徒は更なる追い討ちを掛ける。なんと、フィアの前で告白したのだ。ミリオンがわざとらしく「あら~」なんて言い、ミィは目を逸らしつつも興味があるのか身体を前のめりにする。

 そして花中は頭の中が真っ白になった。

 つまり、これは、百合の花がお咲きになってらっしゃる?

 脳裏を過ぎる謎敬語。無論誰も答えてくれない。答えずとも答えは明白だった。思い返せばフィアは「珍しい相手に呼び出された」と言っている。確かに珍しい相手だ。珍しいの一言で済ませられる相手ではないが。

「そうですか」

 ちなみにフィアはなんの動揺もなく、淡々と彼女の告白を受け入れていた。無関心にも近い言葉に、されど女子生徒は頬を赤らめ、嬉しそうに笑みを浮かべる。

「あ、あの、初めて会った……虐められてた、私を、助けてくれた……あの時から、慕っていました」

「はぁ。そんな事ありましたっけ?」

「……あなたにとっては、忘れてしまうぐらいつまらない事でも、わたしにとっては、忘れられない思い出です」

 恋する乙女が語るは自分達の馴れ初め。フィアはすっかり忘れていたが、女子生徒はそれをショックに思う素振りもない。

 己の想いを柱にした、とても強い決心が感じられた。

 いや、強い想いがないなんてあり得ない。フィアの性別は一応女であり、普段からそのように振る舞っている。ならばあの女子生徒は、本当に女性であるフィアに恋しているのだろう。異性への告白とは訳が違う。世間体、相手の認識、自分の中の常識……その全てを打ち破るほどの強い『愛』がなければ、告白なんて出来やしない。

 彼女は本気だ。これまでフィアにラブレターを送ってきた全ての男子達よりも、ずっと。

「お、おかしいのは、分かっています。でも、せめて、この気持ちだけは、知ってほしくて……愛しています! だから、私と、付き合って、ください……!」

 女子生徒は己の気持ちを吐き出しながら、深々と頭を下げ、己の右手を前に差し出す。OKならばその手を掴んでくれという意味なのは明らかだ。

 フィアはその手をじっと見つめ、じっくりと考える。尤も、フィアにとってのじっくりとはほんの数秒程度だ。数秒後のフィアは――――伸ばされた彼女の手を掴まなかった。

「良いですよ」

 掴まなかったが、答えはOKだった。

 あまりにも呆気ない返事に、女子生徒は顔を上げるまでに数秒掛かった。木陰で見ていた花中は、未だ固まったままだった。

「い、良いの、ですか?」

「? なってくれと頼んだのはそちらじゃないですか。もしかして冗談だったのですか?」

「い、いえ! 冗談じゃありません! 本気です!」

「じゃあお付き合いしましょう」

「ふ、ふひゃわわわわわ……!」

 女子生徒は浮ついた声を漏らし、その場でジタバタと足踏み。よもや成功するとは思っていなかったのだろう。喜びで顔がふにゃふにゃに蕩けていた。

 ――――その一部始終を見ていた花中の顔は、どんどん強張っていく。

 フィアちゃんとあの人が、恋人になってしまった。

 本来なら、それは祝福すべき事だろう。だけど花中には祝えない。恋人になれば、二人きりの時間が作られる。時間は有限だ。何かに使えば、何処かを削るしかない。そしてフィアは一日の大半を、花中との時間に費やしている。だから削れる時間なんてそこしかない。

 勿論、友達じゃなくなる訳ではない。遊びに行く事も出来るだろう。だけどそれは、何時も、という訳にはいかなくなる。あの女子生徒の存在が何時もちらつき、自分と一緒の時間が減っていく。

 嫌だ。

 離れるなんて嫌だ。寂しい、怖い、悲しい。胸の中からどろどろとした感情が溢れて止まらない。

 なんでフィアちゃんは、あの人と――――

「あ、あの、じゃあ、早速ですけど、今日、一緒に帰りませんか!」

 どす黒い気持ちに満たされる花中を余所に、女子生徒は太陽のように眩く微笑みながらフィアに提案する。学校から家までの時間は自分のものなのに。自分だけのものなのに。それがあの人に盗られてしまう。あんな、今まで忘れ去られていたような人に。

 恐怖は憎悪に、憎悪は呪いに。心の黒さは色を増し、底はどんどん見えなくなる。

 そして、

「えっ。今日は無理ですよ。花中さんと一緒に帰る約束をしてますから」

 あっさりとフィアは『恋人』からの誘いを断った。

 ……あまりにもあっさり断るものだから、女子生徒は笑顔のまま固まっていた。絶望のどん底にあった花中の心も、ぽんっと浮上した。

 しばらくして我に返ったのか、女子生徒は笑みを引き攣らせながら前のめりになっていた身体を戻す。

「あ、そ、そうですか。お友達ともう約束していたのなら、仕方ないです。えっと、じゃあ、今週の土曜日とかは」

「休みの日は花中さんと一日くっついてる予定なので無理です」

「えっ、えと、なら、明日から、一緒に帰るとか」

「帰りは花中さんと一緒ですのであなたと帰るつもりはありませんよ」

「えっ」

 じゃあ何時デートするの?

 そう言いたげな沈黙は、しかしフィアには届かない。

「話は終わりましたか? でしたら私そろそろ花中さんのところに戻りたいのですが」

「あ、は、はい。えと、ま、また、明日?」

「はいまた明日」

 フィアが手を振るので女子生徒も振り替えし、振ってしまった手前帰らない訳にもいかなくなる。

 背を向けて、振り返り、ちょっと歩いて、振り返り。けれどもフィアは追い駆けず、女子生徒との距離はどんどん遠くなり……ついには見えなくなる。

「花中さーんようやく終わりましたよーそろそろ帰りましょうかー」

 相手が居なくなるや、フィアはすぐさま花中の下に駆け寄ってきた。

 正直、すごく嬉しい。今すぐフィアに抱き付きたいぐらい、喜びの感情が胸の中で弾けている。

 だけど、それ以上に分からない。

「あの、フィアちゃん……」

「ん? なんですか?」

「なんで、あの人と、一緒に帰らなかったの?」

「そうよそうよ、恋人からのお誘いを断るなんて」

 花中が尋ねると、ミリオンが抗議染みた言い方でフィアを問い詰める。ミィは何も言わなかったが、その視線は若干批難混じりだ。

 友からの追求に、フィアは目をぱちくり。

「何故恋人になったらあの人間と行動を共にしないといけないのですか?」

 心底不思議そうに、そう尋ね返してきた。

 誰もが一瞬で固まる。しかしいくら待っても、その言葉の続きはない。撤回もしてこない。蝉の鳴き声が、辺りに延々と響き続けるのみ。

 やがてミリオンは顔に手を当て天を仰ぎ、ミィは呆れたように目を細める。

 そして花中は、吹き出すように笑い出した。

「あは! あはははは! なに、それぇ! あはははははは!」

「? 随分と楽しそうですね花中さん。何か良い事でもありましたか?」

「そりゃもう、とびきりの良い事があったわよねぇ?」

「お子ちゃまだなぁ、どっちも」

 呆れ返る二匹。フィアがキョトンとする前で、花中は延々と笑い続ける。

 ああ、そうだ。フィアとはこういう子だ。

 つまりフィアは、恋人よりも友達の方が大事なのだ。色恋が理解出来ない故に、恋人という関係に特別を見出せない。同性愛も異性愛も関係ない。なってほしいと頼まれて、なったところで困る事も思い付かなかったから容認しただけ。

 対して花中との友達関係は、フィアの方からなろうと言ってきた事。

 他人から請われたものより、自分からお願いしたものの方が大切なのは当たり前の事ではないか。

「あはははっ! あは、はははっ……あー、たくさん笑ったら、なんか、お腹減っちゃった。ねぇ、フィアちゃん。一緒に、喫茶店に行かない?」

「勿論花中さんが行きたいところでしたら何処へでも」

「あら、良いわね」

「あたしも偶には一緒に行こうかなぁ」

「ふん。あなた達はお呼びじゃありませんよ」

 ミリオンとミィが参加の意思を示すと、フィアはあからさまに嫌悪を露わにしながら、虫でも払うようにしっしっと手を振る。極めて何時も通りの反応で、ミリオンもミィも気にも留めない。

「えと、ごめんなさい。今日は、フィアちゃんと、二人きりが、良いな」

 何時もと違うのは、花中が窘めるどころかフィアに同意した事ぐらい。

 されどその同意は史上初めてのものであり、ミリオンとミィどころかフィアすら驚きで顔を染める。

 その顔が、嬉しさいっぱいの笑みへと変わるのにさしたる時間は要らなかった。

「――――ふっははははは! 残念でしたねぇ! 今日は私と二人きりが良いとの事ですよ!」

「繰り返さなくても聞こえてるわよ。ま、そんだけ不安だったって事ね」

「ちゃんと安心させてあげなよー」

「さっきからなんの話かさっぱり分かりませんがこの私に任せなさい! さぁ花中さんすぐにでも行きましょう!」

「うんっ♪」

 フィアと手を繋ぎ、見送ってくれる友達二匹に手を振りながら花中は早歩きで進み出す。

 その最中にフィアの顔を見上げ、フィアも花中の顔を見てくる。花中はふにゃっと頬を綻ばせた。

「ねぇ、フィアちゃん。これからも、ずーっと、友達でいようね」

「何を当たり前の事を。私は最初からそのつもりですよ」

 互いの想いを確かめ合い、花中は満足したように頷く。

 繋いだ手をより握り締め、花中はフィアと共に駅前へと向かうのだった。


























 なおこの二ヶ月後、結局一度もデートが出来なかった女子生徒がナイフを持って花中に襲い掛かる事件が起きるのだが、それは別の話である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る