第19話 暗転
「ほら、さっさと歩かないか」
ミノーラが
彼を連行しているのは、あのトリーヌである。
「どうした、何か言いたい事でもあるのか? ……おっと、それは皮肉になるのだったな。そんなに私を
隣を歩くトリーヌに対して
それとも、生まれつき目つきが悪いのかもしれない。
『これがいわゆる
そんなことを考えながら、彼は足を進める。
しばらく歩いていると、コロニーの最下層と思われる場所へと辿り着いた。
らせん状に降りている太い枝を
その台座が何を意味するのか、考えたくないのだが、容易に想像が
『おい、ちょっと待て、飛び降りろってか!? いやいや、さっき丁重に扱うって言ってたぞ? まぁ、両手を拘束されてる時点でそれは期待しちゃいなかったが』
最後の抵抗の意味を込めて、トリーヌへと目を向ける。
しかし、彼は一瞥たりともこちらへと向けてはくれない。
「さあ、そこに立つんだ」
言われるがままに、台座の上へと昇るカリオス。
その台座は
その手すり
まだコロニーの内部であるため、下に
しかし、その壁が人間一人を支えることが出来る
そもそも、人間一人を支えることが出来たとしても、衝撃で命を落としてしまう程の高度がある。
口元の金具の中でため息をつきながら、トリーヌを振り返り、最後の
しかし、そんな彼に放たれた声は、予想外の物だった。
「お前は、何を見た」
『は?』
思ってもいない言葉に
途端、彼のは背後から甲高い声が響いた。
「ヘイ! そこの
やたらと早口で、
その声に呼ばれるまま、台座の手すりに目をやる。
先程見た手すりと何ら変わりはないのだが、その手すりの上に何やら小さな人間が腰かけている。
『なんだ? 小人?』
「おいらは小人じゃねぇ! 兄ちゃん、なんでそんなに反応薄いんだよぉ! こそこそ隠れてたこっちが恥ずかしいじゃねぇかよぉ!」
突然現れた小人と言う存在に対して、カリオスはあまり驚きを抱かなかった。それよりも彼を驚かせたのは、その小人が当然のように会話を続けている点である。
「それで、彼はどうだろうか?」
あっけにとられていたカリオスの背後から、トリーヌが声を掛ける。
「問題は無さそうだぜぇ! 今なら誰も見ちゃいねぇ、サクッとやっちまいなぁ!」
「そうか」
唐突に嫌な予感を覚えた彼は、とっさにトリーヌの方を振り返ろうと身をよじりかけた時……。
『ぬあっ!!』
肩に強い衝撃を受けたかと思うと、視界が一回転し、気が付けば自由落下を始めていた。
上も下も分からぬまま、全身に風を受けて体が回転する。もみくちゃになりながらもたまに見えるコロニーの壁が徐々に近づいていることから察するに、台座から投げ落とされたようだ。
『くそおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーー!』
声として発することが出来ずとも、彼は絶叫していた。
そんな彼だったが、耳元で発せられた小さな声をシッカリと聞き取った。
「兄ちゃん。悪いが一遍死んでくれ」
ここ最近、死ぬことを強要されすぎている気がする。これで何度目だろうか。
そう考えながら、彼の意識は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます