第73話 8月16日(月・夜)夢を信じて・・・④

 僕はなかなか寝付けなかった。

 冗談なのか本気なのか分からないけど、姉さんは自分の進むべき道筋を決めた。姉さんほどの美貌と知性があれば本当に叶うのかもしれないし、それはそれで嬉しい事だと思う。

 美紀は自分の進むべき道を決めたからトキコーに進学したと言っても過言ではないかもしれない。

 美紀の兄さんの雄一さんが言っていた。美紀の一言は坪井牧場に変革をもたらしたと。だから坪井牧場も変わろうとしている。美紀の父さんや母さんも、それに雄一さんも変わろうとしている。新たな目標に向かって歩み出したんだ。

 でも僕は・・・

 たった1つ、たった1つの事しか考えてなかったから、それが叶えられなかったというだけで目標を失ってしまった。

 本当にこれでいいのだろうか・・・

 僕は何をすればいいんだろう・・・

 もしこの答えを出してくれる人がいるとすれば、その人は・・・いや、こんな事であの人に相談するのは失礼だ。僕が本当に進むべき道に迷ったら、その時には・・・


 そろそろ11時になる頃だ。さすがに寝たいと思うけど、どうも目が冴えている。夏休みの怠け癖かなあ。


“ブーブーブーブー”


 あれ?何だ?

 夜だからマナーモードに設定してあるから音が出ないので電話なのかメールなのか分からないけど、机の上に置いてあるスマホが振動している。誰だ?

 僕はベッドから起き上がってスマホを手に取った。

 メールだ・・・一体、何の用だ?


『明日からヨロシク!   クリス』


 へ?・・・何だこりゃあ?

 たったこれだけ・・・意味不明。まあ、たしかに明日からは2学期だ。恐らく『2学期もよろしくお願いします』というような意味のメールだろうな。


 僕はスマホを再び机の上に置いてからベッドに横になった。


“ブーブーブーブー”


 はあ?またメールか?それとも着信?

 もしかしてクリス先輩が返信をしなかったから催促のメールをしてきたのか?だとしたらヤバイ!

 僕は立ち上がってスマホを手に取った。


『明日からよろしくね!   実姫より』


 へ?・・・何だこりゃあ?

 さっきのクリス先輩と同じで意味不明だ。


 でも、恐らく実姫先輩もクリス先輩も同じような意味でメールしてきたんだろうな。

 クリス先輩は恐らく返信しないと文句を言ってくるだろうし、実姫先輩も返信しないと学校へ行ってから『わたくしのメールを無視するとはいい度胸ですね』とか言って女王様モード全開で難癖をつけてくるかもなあ。

 そうなったら面倒だから、この際、二人に返信しておいた方が無難だな。


 先に送信してきたのがクリス先輩だから、まずはクリス先輩に・・・「分かりましたよ。明日からよろしく」

 実姫先輩にも・・・まあ、同じ内容だけど「分かりましたよ。明日からよろしく」


 ・・・これで良し。これなら苦情を言ってくることもないだろう。

 でも・・・一体、二人とも何でこんな時間に僕にメールをしたのだろう?


 ようやく眠くなってきたから僕はベッドに横になったらいつの間にか寝ていた。


 でも、僕は全然気付いてなかった。これが波乱を巻き起こす元凶になっていた事に。



                             ~第二部 完~

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続・僕は普通の高校生活を送りたかったのにMIKIが引っ掻き回して困っています 黒猫ポチ @kuroneko-pochi

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