第29話 8月5日(木)異世界の扉の向こう側⑥

 いきなり美紀が大声を上げたから僕はびっくりして思わずマウスを落としてしまったくらいだ。

「みーきー、いきなり大声出すなよ。びっくりするじゃあないか」

「あー、スマンスマン。実はさあ、どうやら一人、来れなくなったらしい」

「えーと、どれどれ」

 僕は自分のプレイを中断して美紀の画面を見た。そうしたらチャットで


ショータ『おーい、さっきリアルでメールが入ったけど『ワタル』が仕事が終わら

     なくてまだ会社にいるから参加できないようだぞ』

ミキティ『えー、マジですかあ』

まどか 『どうする、三人で攻略する?』

ショータ『でも、「冥王の宮殿」を前衛タイプ3人だけでは無謀だぞ。やっぱり回

     復系の使い手がいないと結構厳しいよ。攻撃系の高レベル呪文が使えれ

     ばベストだけど』

ミキティ『だからと言って、少なくともレベル80以上でマスターかそれに近い人

     を今から探すとなると難しいよ』


「・・・そう言えば猛、お前、リリカでログインしているんだよな。だったら一緒にダンジョンを攻略しようぜ」

「はあ?」

「リリカは全ての呪文を使いこなせて、魔術師だけでなく神官と賢者のスキルも全て習得してる。しかもレベルは110だ。攻撃呪文だけでなく回復系も出来て下手な賢者よりも使い勝手がいいからメンバーとしては十分すぎるくらいだ」

「でも、僕はこのキャラを使いこなせてないよ」

「そこはあたしもカバーしてやる。それにお前は『トーチュウのキング』だろ?その腕であたしと一緒にダンジョンを攻略しようぜ」

「わかった。じゃあ、美紀と一緒にダンジョン攻略に乗り出そう」

「頼んだぞ」


まどか 『おーい、リアルの友達が参加してくれるって連絡があったぞ』

ショータ『どんなタイプだ?結構可愛い子か?』

ミキティ『ゲームにリアルの情報は必要ないと思うけど』

ショータ『いやあ、スマンスマン。職業は何だ?』

まどか 『魔術師。だけど全ての呪文を使えるし神官と賢者のスキルも全部持って

     るから下手な賢者より役立つ。しかもレベルは110』

ショータ『マジかよ!?そんなキャラがいたんだ』

まどか 『もうちょっとしたらここに来るから少し待ってくれ』

ショータ『りょーかい』

ミキティ『分かったよ』


「美紀、道具屋の薬でHPとMPを回復させておく。それといくつかのアイテムも買い足すぞ」

「構わんぞ。それにゴールドは腐るほど持ってるからなあ」

「たしかに腐るほど持ってるな。さすがの伯母さんもゲームでは倹約家なのか?」

「いや、その逆だ。お母さんはカジノに頻繁に出入りしてるけど、信じられない程の高確率でポーカーを勝ちまくるからコインがほとんど減らないんだ。しかもスロットではリアルだったら出入り禁止になるくらいに荒稼ぎするらしいぞ」

「マジかよ!?」

「あたしはカジノではかなり負け越してるからな。そう考えると機械相手に勝ちまくるなんて信じられない程の強運の持ち主だぞ」

「こっちも神以上の存在かよ!」

「そういう訳だからゴールドの使い道に困ってるから遠慮せずに使ってやれ」

「分かった」

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