第25話 8月5日(木)異世界の扉の向こう側②

 僕は一度伯母さんの所へ戻ったが、いやはや、一体どれだけ飲んだのか調べるのも嫌になるくらいの量だ。まあ、城太郎伯父さんや雄一さんもチューハイを開けていたが、それでも1本だけだ。これでも二人とも顔が真っ赤になっているのだから、母さんと伯母さんが異常だとしか思えない。が、まだシラフに近いから聞けば教えてくれるかもしれない。

「あのー、伯母さん、美紀はどこに行ったのか分かりますかあ?」

 僕は普通に聞いたつもりだったが、伯母さんはニコニコしながら

「あー、美紀なら『異世界の扉』の向こう側にいるわよー」

「はあ?」

「だーかーら、この世界にはいないのよお」

「なんだそりゃあ!?」

「あー、猛君は伯母さんが酔っ払ってると思ってるでしょ?」

「うん」

「ゆーいちー、あんたはこの家にある『異世界の扉』の先にある世界を知ってるわよねえ」

 伯母さんはニコニコ顔で雄一さんに話を振ったが、雄一さんは面倒くさそうな顔をしながら

「知ってるも何も、あの扉の先に行って平気なのは美紀とお母さんだけだぞ」

「あらー、それは失礼じゃあないの!?あれはお母さんが作り上げたリアルワールドよ」

 慶子伯母さんは益々ニコニコ顔で雄一さんに話しているけど、雄一さんはその逆で少し不機嫌そうな顔をしながら

「たけしくーん、あの扉は開けない方がいいぞ。行けば多分この世界に戻れなくなるぞ」

「そんな事ないわよ。あんたも昔は入り浸ってたでしょ?」

「前の家の時には入り浸ってたのは認めるけど、今はそんな事はしてないぞ。それに健二も俺も手に余るから美紀しかお母さんについていけないんだぞ」

「あー、そんな事は無いでしょ?本当は恵美ちゃんに遠慮して入るのをやめたんでしょ?」

「それとこれとは別問題だ!恵美は関係ない!!」

「ホントかなあ」

「あー、うるさいからもうこの話は終わり!」

 そう言うと雄一さんはソッポを向いてしまい、もう1本のチューハイを開けて飲み始めた。たしか恵美さんというのは雄一さんの高校の1年後輩で雄一さんが高3の時の彼女のはずだ。という事は今でも付き合っているという訳か・・・まあ、思わぬ話を聞けた訳だが、さっきの話にあった『異世界への扉』がどこにあるのかを探さねばならない。

 この家の構造を思い出すんだ、多分、見落としがある筈だ・・・でも、可能性がある場所は既に調べたし・・・雄一さんの話から想像すると雄一さんと健二さんの部屋に『異世界の扉』があるとは思えない。当然だがお爺ちゃんたちの部屋にもあるとは思えない。一体、どこだ?

 いや、ちょっと待て・・・慶子伯母さんは『異世界への扉』の先にある部屋って言ってたな・・・扉の先に部屋があって、しかもまだ調べてない場所・・・あれ?そう言えば・・・あれだけの収納スペースがあったにも関わらず何故タンスや収納棚が部屋に所狭しと置いてあったんだ?もしかして・・・異世界とは『あの場所』の事を言ってるんじゃあないよなあ。たしか、あの場所には引き戸があった筈だ。その先にも人が入れるだけのスペースがある!

 となれば・・・美紀の居場所は・・・慶子伯母さんたちの部屋だ!

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