第24話 8月5日(木)異世界の扉の向こう側①

 そう言って慶子伯母さんはグビグビとビールを飲み始めた。どうやら何かの代役を美紀に頼んだ事で安心して宴会(?)に専念できるようになったみたいだ。

 当然だが僕には何の事か全然分からない。隣にいる姉さんも首を捻っているくらいだ。美紀だけは小遣いアップが確定し、さらに結果如何によってはさらに増額されるって言われたからだろうか、僕も姉さんもまだ食べているというのに、自分はサッと立ち上がって食器を片付けたのかと思うと出て行ってしまった。しかもニコニコ顔で。

 美紀がニコニコ顔になるような事で、しかも慶子伯母さんの代役となると・・・一体、何だ?それに「お母さんは全世界の創造主」という発言も気になる。まさかゲームじゃあないだろうなあ。たしかに美紀のゲーマーとしての腕は神レベルだが、とてもではないが慶子伯母さんが神レベルを遥かに上回るゲーマーとは思えない。グータラ主婦の母さんを遥かに上回るグータラ主婦である慶子伯母さんが、美紀と互角かそれ以上の事をやれて、しかもこの家にあって僕が知らないこと・・・マジでさっぱり分からない。

 だが、折角小耳に挟んだ事ではあるが興味が沸かないと言ったら嘘になる。僕は美紀を探す事にした。

 まあ、一番可能性が高いのは美紀自身の部屋だが・・・美紀の部屋は3階の一番端だから

「おーい、美紀、入ってもいいかあ」

 僕は廊下から声を掛けたけど返事が無い。もう1回同じ事を言ったが無反応だった。

 おかしいなあ。もしかしてヘッドホンとかをしていて気付かないのかなあ。僕はドアをノックしてからゆっくりとドアを開けた。

 だが、部屋は真っ暗でとてもではないが美紀がいるように思えない。となると、どこに行ったんだ?スマホで呼び出してみて・・・はあ?美紀のやつ、机の上で充電している最中かよ!?・・・これじゃあ連絡がつかない。

 次に可能性がある場所は・・・慶子伯母さんの依頼なのだから伯母さんと伯父さんが使っている部屋かな?僕は2階に行って伯母さんの部屋をノックした・・・が、やはり何の反応もない。仕方ないからドアをゆっくりと開けた・・・が、誰もいない・・・おかしいなあ。でも、この部屋も随分手狭になったなあ。収納用のタンスとか整理棚が以前よりも増えたから余計に狭く感じる・・・。

 それにしても美紀は何処へ行ったんだ?・・・もしかしたら事務所にいるのかなあ・・・僕は1階に行って事務所のドアを開けたが、やはり真っ暗で誰もいない。もしかして外なのかなあと思って玄関に行ったけど鍵が掛かっているし美紀の靴もあるから外に行ってない・・・いや、もしかしたら事務所から外に出るドアから出て行ったのかもしれない・・・そう思って事務所にもう1回行ったけど、事務所のドアも内側から鍵が掛かっているから美紀は家の中にいるはずだ。この後、僕はお爺ちゃんたちの部屋、浴室や2つのトイレ、雄一さんや健二さんの部屋も覗いたけど、やっぱり美紀はいない。ひょっとしてすれ違いになったのかと思って美紀の部屋にもう1回行ったけど、やっぱり美紀はいなかった。

 いくら何でもおかしいぞ!!

 どこかに見落としがあったとしか思えない・・・こうなったら意地でも美紀を見付けてやる!

 どこかに手掛かりは・・・いや、こういう時は聞き込みが基本だ。となると慶子伯母さんに聞くのが手っ取り早い。

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