第18話 8月5日(木)神秘の・・・①

 次の目的地、『とある場所』とは・・・摩周湖の展望台だ。

 え?昨日も行った?いやいや、昨日とは違う場所にある展望台で、しかも人がほとんど来ない展望台があるのだ。

 摩周湖の展望台は3つある。有名なのは第一展望台で、雑誌に載っている摩周湖の写真は第一展望台から撮影された物が使われている。同じ道路沿いにあるのが第三展望台だ。昨日、僕たちが行ったのは第一展望台だが、今日、僕たちが目指している場所は『裏摩周展望台』だ。

 こちらの展望台は、第一、第三展望台よりも標高が低い位置にあるから、水面を見られる確率が高い。だが、アクセスルートが結構大回りになってしまう事と、冬場はこのルートの峠が通行止めになる事から行けなくなるという制約がある。

 因みに第二展望台はないですよ。第一展望台から約1kmの地点に第二展望台と呼ばれていた箇所があったようですが現在ではその痕跡すらほとんど残っていない『幻の展望台』である 。

 それと、この場所に午前中に行った最大の理由は『午後の遅い時間になると、西日が当たり逆光になって写真撮影が出来なくなる』という事だ。だから裏摩周展望台で摩周湖を背景にして写真撮影したいなら午前中の早い時間に行く必要があるのだ。開陽台からは車で30分以上かかるが、観光バスは基本的にこないし一般の観光客もまばらで、静かに摩周湖を見たい人は裏摩周展望台をお勧めしたい。場合によっては展望台を一人(1グループ)で独占する事も出来る位の静かな環境である。

 もっとも、第一展望台のような立派な展望施設がある訳ではないのであしからず。

 その裏摩周展望台を僕たち四人は独占する形で神秘の湖「摩周湖」を眺めている。『霧の摩周』と呼ばれる程の神秘の湖だけど、撮影する側から見れば霧がかかってない時に行けるのは幸せだ。

 摩周湖の特徴ともいえる、湖に浮かぶ唯一の島『カムイシュ島』はアイヌ語で『神となった老婆』。でも、本当は高さ約240mの火山の頂上部がほんの少しだけ水面上に顔を出しているにすぎないんだけどなあ。その名の通り、悲しい伝説を持つ島だけど摩周湖のシンボルでもある。そして、『摩周ブルー』とも呼ばれる神秘的な青は、急激に深くなっていることとその透明度から青以外の光の反射が少ない事から起こる。透明度に至っては、かつては当時の世界記録となる41.6メートルを記録した事もあるが現在は20メートル前後だ。でも、これでも屈指の透明度である事は間違いない。

 つまり、いつまで見ていても飽きない神秘的な湖であるが、それを現実に引き戻すのは相変わらずであるが姉さんたちである。

「おーい、猛、早く写真を撮ってよー」

と、湖を背景にして写真を撮るよう、僕を急かしている。自分たちはさっさとスマホで写真を撮りまくったのだから、あとは僕が写真を撮るのが当たり前だと言わんばかりの態度である。

「はいはーい、ちょっと待って下さいよー」

「まだかー。誰も来ないからいいけど、昨日のような所だったら他の人の迷惑になってるぞー」

「はいはい。ったく、人使いの荒いのだけはどこへ行っても同じですね」

「ん?何か言ったか?」

「・・・いや、ただの独り言です」

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