第31話
「それじゃあ、あたしはここで失礼するわね」
「ばいばい、ゆき。また明日ね~」
「ええ、また明日。壱河くんと、それから弐宮くんも」
同じように「また明日」と手を振り、五反田さんと別れた。その場に残ったのは、いつものメンバーだ。数分前までは気まずくて目すら合わせられなかった。
「あ、今日はちょっと野暮用があったんだ。オレもこれで失礼するぜ」
「そうなんだ? じゃあ、賢一くん。また明日ね~」
芋づる式に賢一もどこかへ行ってしまい、何の因果か、なつとふたりきりになってしまった。ひとりよりはマシだけど、そのぶん気まずさも上乗せされている。
だけどなつは、僕の不安な気持ちを知ってか知らずか、なんだか嬉しそうに笑みをこぼし、そして口を開いた。ふたりきりになれたことを喜ぶみたいに。
「ねえ、雄二。ゆきとはどこまで行ったの? A? C?」
「……なんの話? NDCのこと?」
「NDC? なにそれ……新しいダウンロードコンテンツ?」
「あ、ごめん。なんでもないから気にしないで」
NDCとは日本十進分類法のひとつで、アラビア数字の0から9などを用いて、あらゆる図書を細分類することなのだけど、たぶん違うと思う。
だいたい、図書委員でもないなつがこのことを知っているとは考えにくいし、うちの学校ではアルファベッドも使っている。たとえば伝記だと、D12とするように。
「まあ、いいや。何にせよ、雄二に女の子の友だちが増えるのは良いことだもんね」
「そういうなつも、僕以外の男子と友だちになれて良かったよ。中学までほとんど男子は僕としか話していなかったでしょ。だから安心しているよ」
それがいまでは、僕を困惑させるほどのドッキリを仕掛けるまでに成長したのだから、もはや安心を通り越して不安しかないのだけど。
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