第30話
「しかも、ふたりとも。急激に仲良くなったよね? それって、もしかしてだけど、わたしたちのお陰だったりしちゃう?」
「は、はあ? 何を言っているのよ、あなたは。あたしと弐宮くんが仲が良いですって!? そんな……そんなことはないわ! ただあたしは落ち込んでいた彼を励ましただけよ。好きとかそういうあれではないわ!! 決して、断じてよ!!」
この慌てっぷりからして五反田さんは、図書室での一件やビンタゲーム考案のときも、実は僕の相手が嫌だったのだろう。顔に出さなかっただけで、充分にあり得る。というかもはや自明の理である。当たり前だ。
僕は賢一みたいにイケメンという訳ではないし、特別に誰かの特別な存在にもなったことがないから、配慮が足りなかったのかもしれない。彼女には迷惑を掛けてばっかりだ。僕みたいなやつに、親身になってくれただけでもありがたい。
「五反田さんの言う通りだよ、なつ。僕なんかのために無償で何かをしてくれるような人自体珍しいんだから。そんな人、母さん以外には居ないよ」
自分で言っていて、悲しくなった。僕は身内を除けば、誰にも見向きもされない人間なのだ。そこらへんに落ちている石ころと何ら変わりはない。
「あ、いや……別にそういう意味じゃなくて、ええと、その――」
「ごめんね、ゆき。雄二って本来はこういう人だから……」
五反田さんのやさしさが身に沁みる。本当は僕のことが嫌だったはずなのに、そんな僕のことをまだ親身に考えてくれている。僕なんかのために、ありがとう。
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