第91話
ゴン、ガシャン。
地面に何かを打ち付ける音と同時に鼻先に鈍い痛みが走り意識が戻る。どうやら顔面から私は床に倒れこんだらしい。
「お父ちゃん!」
慌てて駆け寄るキキの足音が近づいてくる。
痛む鼻先を押さえようと手を動かすと背筋に言いようない悪寒が走り、全身を鋭い刃物で覆ったムカデが這いまわるような不快感と突き刺すような痛みが襲い掛かってきた。
『あぐぅ…』
うつ伏せのまま痛みに呻く私の手を小さく柔らかな手がしっかりと握りしめる。その掌を私の手の甲にある突起物が突き刺し一筋の紫色の雫を滴らせた。
『キキ!血が出てるじゃないか』
顔を上げるとボロボロと涙を流しながら微笑むキキの顔があった。
慌ててを手を振りほどこうとしても小さな手は逃がすまいとしっかりと私の手を捕えて離さない。
「お父ちゃんの痛いのに比べたらこんなの痛くなんかない。何も役にたてないうちやけど、それでもお父ちゃんに何かしてあげたいんよ。だから、うちの魔力貰ってや」
キキの手から暖かな力が私に流れ込んでくる。キキの光の魔力が私の中で暴れている闇の魔力を少しずつ浄化していく。闇の魔力が浄化されていくにつれて痛みも徐々に和らいでいった。
『ありがとう。もう大丈夫』
痛みの消えた身体を起こし、優しくキキの頭を撫でるとストンとキキはその場に座り込んでしまった。
『大丈夫かキキ』
心配げに私が尋ねるとキキはにっと笑う。
「このくらい大丈夫や。うちはお父ちゃん子やで」
とふらつく足で立ち上がるとむんと胸を張って見せた。
『キキは私の自慢の娘だよ』
気丈に笑う愛しい子の頭を撫でてやると嬉しそうにキキはその金色の目を細めた。
「進めそうか?」
尋ねるノティヴァンの声には私とキキを気遣うものがあった。
『私は大丈夫だ』
「うちも大丈夫やで」
立ち上がり私たちが答えると「よし、行こう」とノティヴァンは内から鼓舞するように元気よく言う。
「アイナも行くぞ」
ノティヴァンの差し伸べた手をアイナが握り返し立ち上がると玉座の間に通じる扉に私達全員で手をかけた。
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