第四章

4-1

 学園祭まで、あと二週間を切った。

 この季節、このキャンパスは一年で一番美しいいろどりに身を包み、通りゆく僕たちを魅了する。

 レンガ色の建物の間で踊るように立つ銀杏いちょうの木々。

 上品な黄色に色づいた独特の形の葉が背景のレンガ色とあいまって、秋だというのに物悲しさひとつ感じさせない、温かみのある風景を作り出している。

 この銀杏いちょうの木は市のシンボルにもなっている、古くから市民に親しまれている馴染なじみの木だ。

 その葉が秋風に吹かれて円舞曲ロンドを踊り、やがて踊りつかれてひらひらと散り始めると、僕らの学園祭が開幕となる。

 優花ゆうか先輩が「名前だけ監督」のラジオドラマは、その必要な音声を全部録り終えて、いまは編集作業の真っ最中だ。

 タイトルはずいぶん悩んだが、そのまま「僕が恋した図書館の幽霊」にすることにした。

 あゆむさんが作ったラジオドラマと「図書室」と「図書館」が違うだけの、なんとも芸が無いネーミングだけど、これ以上の秀逸なタイトルは思いつかなかった。

 父さんは程なく退院して、すぐに仕事に復帰した。その後は体調を崩すことも無く、いまのところ順調に病み上がりを過ごしている。

 美琴みことさんは、毎日お見舞いに来てくれた。

 仕事が終わって研究室に行くまでの間だから、そんなに時間的余裕は無いはずなのに、ちょっとしたお菓子を持って毎日様子を見に来てくれた。

 ちょっと気になって「兄さんたちの食事の用意は大丈夫なのか」と聞いたら、「大丈夫。ちょっとくらい食べなくても死なないもん」と、けっこう辛辣しんらつな返答。

 でも本当のところ、音が聞こえないと料理するのは危ないからといって、美弦みつるさんがさせてくれないんだそうだ。食事の用意はぜんぶ美弦みつるさんがやっているらしい。

 いったいどんだけシスコンなんだか。

「お父さん、倒れて入院したんだって?」

「え? はい。でももう一昨日おとといの水曜に退院しました。優花ゆうか先輩、知ってたんですね」

「まぁね。でも、……にち、げつ、かー、すい、そんなもん? 早くない?」

 よく調べたら、心筋梗塞で倒れると普通は二週間くらい入院するものらしい。

 ただ、父さんの場合は倒れてすぐ美琴みことさんが発見して、しかもAED処置までしてくれていたから、手術も簡単で入院期間も短かくてよかったようだ。

「そうですね。でも実はもうちょっと休んでもらおうって、退院を一日伸ばしたくらいで。発見が早くて、なんかすごく簡単な方法の手術で済んだらしいです」

「そうなんだ。まぁ水曜が退院の方がはじめくんも都合いいしねー?。水曜部会の休みは固定化してるし」

「ええ、まぁ」

「それに彼女も、……お休みだしぃ?」

 なんとも意地悪な笑顔だ。この人の半眼にらみをはらんだ笑顔は、ほんと背筋が凍りそう。

 今日は金曜日。

 サークルが終わったら、みんなあっという間に部室から居なくなるのが普通なのに、なぜか優花ゆうか先輩は僕がまだ編集中のブースのすぐ横に「監督だからねー」などと言いつつ陣取っている。

 この「むかし制作」の編集機器はかなり場所をとってミキサールームに入りきれないので、部長にお願いしてミーティングスペースの一部にちょっとした編集ブースを作らせてもらった。

 優花ゆうか先輩は長椅子に寝転んで、ファッション雑誌を眺めながらぶつぶつと独り言みたいに話しかけて、僕の編集作業の妨害に忙しい。

 非常にウザい。

 そしてあまりに淡白にしか返答しない僕にイライラしつつ、ついにわざとらしく父さんが倒れたことを話題に出して、とびきりの意地悪スマイルで僕の顔をのぞき込んだわけだ。

 父さんが倒れた日のことを、なぜか優花ゆうか先輩は事細かに知っていた。

 たぶん、美弦みつるさんから聞いたんだろう。

 あれから僕が美琴みことさんと仲良くしているのが気に入らないのか、優花ゆうか先輩は事あるごとに美琴みことさんネタで突っかかる。

 番組の制作がまだ途中なのに、僕が美琴みことさんのために時間を割いているのがよほどシャクに触るんだろうな。

 どうも僕のことを過大評価しているようだが、僕は優花ゆうか先輩が思っているほどの優秀な道具じゃないし、それに「むかし制作」はきちんと予定通り進めているんだから、そんなに気を悪くされる筋合いも無い。

「ま、そうですね。美琴みことさん、毎日お見舞いに来てくれましたし。退院の日もわざわざ手伝いに来てくれて」

「え? かか、家族公認なの?」

「公認? ていうか、命の恩人ですし」

「いや、命の恩人に退院の手伝いさせるのおかしくない?」

「ああー、まぁそうですね。でも美琴みことさん自身が自分で来たいって言って来てくれたんで」

「そ、そう。それは、……よかったわね。彼女、ううう、家まで行ったの? はじめホーム」

「なんです? そのハジメホームって。ええ、夕ご飯食べて帰りましたよ? 帰りは僕が車で家まで送りました」

「へ、へぇー。でも運転しながら彼女と会話とか出来ないっしょ」

 何が言いたいんだ。

 ずいぶんと聴覚障がい者である美琴みことさんをさげすんでいたから、僕の家族があまりにも自然に彼女を受け入れたのが気に入らないんだろう。

 それに、車を運転していても彼女との会話は何の問題も無く出来る。

 父さんの退院前に美琴さんを迎えに行ったとき、僕はカーショップに立ち寄って少し大きめの吸盤付きミラーを買った。

 普通なら左後ろの窓が映るように角度を調整して、二輪車の巻き込みなどを防止するために取り付けるミラー。僕はそのミラーをフロントガラスの右上の角に貼り付けて、ちょうど助手席の全体が良く見えるように照準を合わせたんだ。

【なにこれ? はじめさんの顔が良く見える】

【僕の顔は見なくていいの。これは僕が美琴みことさんの顔を見るための専用】

【それダメです】

【ダメかな】

【はい。その鏡は、わたしがはじめさんの口元を見るための専用】

 スケッチブックに代わって、いまの僕たちの会話はもっぱらSNSエスエヌエスメッセージがメイン。それと併せて、口元を読む口話こうわとジェスチャー、たまに簡単な手話も使う。

 僕がもっと上手に手話を使えるようになったら、たぶんこのメッセージ会話を常用することも無くなるだろうけど。

 運転中もずっと美琴みことさんの顔を見たいと思って買ったミラーだったけど、よく考えたら助手席の美琴みことさんからも僕の顔が見えるんだなと、当たり前のことを彼女から言われて気がついた。

 でもこのミラーのおかげで、彼女の表情や口の動き、身振りなんかが運転中もよく見えてとてもいい。僕の口元を見るための専用と言ったあと、彼女が肩を揺らしてくすくすと笑っているのが良く見えた。

 いや、脇見運転は危ないけどね。

 さらに美琴みことさんは、かなりのスマートフォンの使い手で驚くほど有効に活用していて、これが運転中に限らず普段から僕らのコミュニケーションを素晴らしく手助けしてくれている。

 身振りや口の動きだけでどうしても伝わりにくいとき、特に運転中のように両手を離せないときなんかに活躍するのは音声認識アプリ。

 美琴みことさんは音声認識アプリを起動させたスマートフォンを「これにしゃべって」と可愛らしく僕に差し出して、拾った僕の言葉を文字にして確認したり、意味を調べたりしている。

 こんな使い方、僕は思いつきもしなかった。

「いや、会話出来ないなんてことないですよ? いろいろ方法はありますし」

「ふ、……ふぅん。で、あの、今日は? 編集終わったら真っ直ぐ帰るの? ちょっと学食寄っておしゃべりしない?」

「いえ、先約があるので。あ、そろそろ時間ですね。編集がちょうど煮詰まったところですし、引き揚げます」

「先約? って、……彼女だよね?」

「そうですね。ま、それもありましすし、ちょっと編集で上手くいかないところがあって、大先輩に長々と電話もしなきゃなんないし」

「そ、……そっか」




 ずいぶん日が短くなった秋色のキャンパスは、夕方になると感傷にひたる間も無く早々に色を失うようになった。行き交う学生たちの姿も、どことなく物悲しい。

 でもいまの僕には、この風景も哀惜あいせきたたえたものには感じられない。

 銀杏いちょうの葉の間をまたたく街路灯の灯火ともしびは幻想的で美しく、学食や教室かられる明りは安堵を誘うほど温かく見える。

 図書館のいつもの席。閲覧室の丸テーブルに、彼女はいつもと同じように座っていた。

 まだ僕には気がついていない。

 後ろからそっとのぞき込むと、今日も熱心に小さな折り紙に何かを書いている。

 僕は、ちょっと下がって左側へ回ると、何も見ていない振りをして、彼女の左にゆっくりと腰掛けた。

 顔を上げた美琴みことさんが、満面の笑みで僕を迎える。

【もう、サークルの方はいいの?】

【うん。ずいぶん早かったね。仕事、早く終わったの?】

【うん。今日は楽だった】

【そっか。約束どおり、夕ご飯、一緒に大丈夫?】

【大丈夫】

【それ、キリがいい所になったら教えて?】

 僕が折り紙を指差しながらそう送信すると、そのメッセージを見た美琴みことさんはちょっとハッとして、テーブルの上を片付け始めた。

 僕は「あわてなくていいよ」と手を広げたあと苦笑いをしながら、左手の甲の上で右手の手刀を手前から向こうに滑らせる「ゆっくり」と、小指を立ててあごにちょんちょんとやる「かまわない」という手話をしてみせた。

 美琴みことさんがちょっと頬を紅くして笑う。

 僕が手話を使って話をするのが、すごく嬉しいようだ。

 書き物セットを納め終わったバッグを、よしっ! と、美琴みことさんが両手で抱きしめて立ち上がったとき、僕は美琴みことさんの腕をちょんちょんとつついて正面の壁を指差した。

 そこにあるのは、あの大きな鏡。

 本当に美琴みことさんがその中に住んでいるのではないかなんて考えていた、あの「図書館の幽霊」の鏡だ。

 僕も立ち上がって、袖を引いてゆっくりと美琴みことさんを連れて行く。

 この前、図書館職員の人に尋ねたら、この鏡は前の図書室から移設されたものだと教えてくれた。つまり、そのむかし学生たちが亡くなった図書館司書の女性をしのんで寄付した、あの鏡そのものなのだそうだ。

 二人で鏡の前に立つと、僕の右に立つ美琴みことさんが「どうしたの?」と口を動かしながら、僕の顔を不思議そうに見上げた。

 この鏡が、僕と美琴みことさんを会わせてくれたんだ。

 もし、あの優しい幽霊が本当にこの中に住んでいるのなら、僕は心からお礼が言いたい。

 僕は美琴みことさんに柔らかな微笑みを投げたあとすーっと息を吸って、ちょっとだけ鏡に会釈えしゃくをした。

 横で僕を見ていた美琴みことさんは、うん? って感じで首をかしげたあと、すぐに僕の思いが読み取れたのか「あっ」っと口を開けて姿勢を正して、それから鏡に向かって小さく頭を下げた。

 二人で顔を見合わせてクスっと笑う。

 そして僕たちはおもむろに図書館を出て、二人並んでちょっと肌寒いキャンパスを駐車場へと歩いたんだ。




 美琴みことさんを送って僕が家に帰りついたとき、時刻はもう午後九時半を回っていた。

 美琴みことさんの家は大学のすぐ近く、キャンパスの東側に立ち並ぶ住宅街の一角にある。

 通称「裏門」とみんなが呼んでいる一号館の横の東門から出て、一〇〇メートルも行かない所にある住宅と事務所が一緒になった家。コンクリートの駐車スペースの横には小さく「みくにビルメンテナンス」の看板が上がっている。

 僕と仲良くしていることについて、超シスコン兄貴の美弦みつるさんはいまのところ何も言ってこないそうだ。

 今日も出かけるとき「はじめさんと夕ご飯食べてくる」と伝えたけど、美弦みつるさんは美琴みことさんの頭にポンと手を乗せただけで、特に何も言わなかったらしい。

 ちょっと不気味。

 家に帰り着くと、父さん、母さん、葉月はづきの三人が、何か期待するようなニヤニヤ顔でダイニングテーブルを囲んで、食後のコーヒータイムを楽しんでいた。

 いまのいままで、僕の話をしていったって感じ。

「おかえりー、お、に、い、ちゃん! 初ディナー、どうだったぁ?」

はじめ美琴みことさんは食事は何が好みなのかしら。今日は何食べたの?」

「ああー、はじめ、今度、美琴みことさんを呼んで、ちょっとしたお礼のパーティーでもしようと思ってなー。その、彼女は受けてくれるだろうか?」

「みんなどうしたの? なんか様子がおかしくない?」

「まぁ、いいじゃん。みんな、お兄ちゃんに彼女が出来て嬉しいんだよ!」

「なんなんだ。いや、まだ彼女じゃないし」

 どうなんだろう。

 息子が連れてきた彼女が聴覚障がい者だと聞いて、普通、両親はどう思うんだろうか。優花ゆうか先輩のような反応を示しても、それはぜんぜん不思議じゃない。

 親は、子が一般的で過不足の無い普通の生活を送ることを望むのが常だ。

 でも「普通」ってなんだ。

 耳が聞こえない彼女は普通じゃないのだろうか。

 日本では、麺類を食べるときズルズルと派手に音を立てて食べるのが「普通」だ。でも、これを洋式の食事マナーに照らすと、マナー違反どころか周囲から著しく眉をひそめられる最低最悪の所作となる。つまりそこでは普通じゃないわけだ。

 結局は「普通」か「普通でない」かは、その判断の母体となる環境に左右される。もし音が無い世界、誰もが聴覚のない世界があったとすれば、音が聞こえる僕は「普通じゃない」わけで、奇異な目で周りから見られることになる。

 よく聞く、天の声が聞こえる、電波が見える、なんて言うのと変わらない。

 だから、親が子に望む「普通」は、すごく主観的で独善的な価値観だ。

 ただ僕の家族はそんな哲学的なことを考えるまでもなく、彼女自身を見て直感的にその人柄が愛するに値すると感じ、そして美琴みことさんを好きになった僕の気持ちを理解してくれたんだろうと思う。

美琴みことさんに聞いてみるよ。喜ぶんじゃないかな。好き嫌いもあわせて聞いとく」

「うんうん。で、お兄ちゃん、今日何食べに行ったの?」

「え? ファミレスだけど」

「えー? ディナーでファミレスぅ?」

「どっか雰囲気のいいお店でご馳走するって言ったらものすごく遠慮されてさ。それでもご馳走するって僕が譲らなかったもんで、それならファミレスとか安くて堅苦しくないところがいいって、その」

「へー、堅実けんじつなんだ」

「ね? お父さん、あたしが言ったとおりでしょ?」

「そうだなー、お母さんの言ったとおり」

「なにさ。言ったとおりって」

美琴みことちゃんはね?」

「み、美琴みこと『ちゃん』?」

「そうっ! 美琴みことちゃんはね、すっごくいい子よっ!」

「母さん、テーブル揺れてる」

「お料理は? お料理はするのかしらっ?」

「い、いや、お兄さんがさせてくれないって言ってたけど」

「んもーっ、あたしが教えちゃうわっ! 一緒にお料理するのっ!」

「あの、ちょっと落ち着いて」

「もうねー、あのメガネがまた可愛いのよっ」

「お母さん、すっごく彼女のこと気に入ったみたいねー。こりゃ、完全に娘の座を奪われちゃうなー」

「茶化すな。そんなの美琴みことさんにだって選ぶ権利があるんだから」

「いやっ、美琴みことちゃんはすっごくはじめのこと好きよっ! 間違いないわっ! ねっ? 葉月はづき

「そうそう、もうね、ベタ惚れよ? いいねー、お兄ちゃん!」

「勝手に言ってろ」

 でも、本当にそうならすごく嬉しいな。

 それにしても、僕の友人として受け入れられるだけならまだしも、彼女がこんなにも僕の家族に気に入ってもらえるなんて思いもしなかった。

 でもそれは、やっぱり素直さとか、優しさとか、彼女自身の内面からあふれるものがそうさせたんだろうと思う。

 今日は僕自身、彼女のそのひたむきさに心を揺さぶられた。

はじめさん、イヤじゃない? こんなふうに食事しながら、二人ともスマホ触ってたら、この人たち何なのって思われちゃうかも】

【ぜーんぜん。それに、スケッチブック回転させるよりずっと変じゃないし(笑)】

【ほんと、ごめんね】

【謝んなくていいよ。僕はね? もっともっと、いろんなこと美琴みことさんのためにしてあげたいんだ。役に立ちたい】

【ううん。私は誰かに何かを与えてもらわなくても、今のままで充分幸せ】

【いや、そういう意味じゃなくて】

【分かってる。でもね? よく身体障がい者を見て「かわいそう」とか「不幸」だとか、そんなふうに思っていろいろほどこしてくれる人が居るけど、それは違うの】

【違う?】

【うん。私たちは、いえ、少なくとも私は、耳が聞こえなくて「不便」ではあるけれど全然「不幸」じゃない。嬉しかったり、悲しかったり、毎日いまちゃんと生きているんだって実感してるもの。だから幸せ】

【「不便」ではあるけど「不幸」なんかじゃない、か】

【そう。だから、そんなふうに「何かをしてあげたい」なんて思わないで】

【ごめん。ちょっと考え違いをしてたかも知れない】

【大丈夫。はじめさんが、心の底から本心でそう思っていてくれているのは、すごく嬉しいから】

 僕は、美琴みことさんのことが好きだ。

 だから、彼女の役に立ちたいし、彼女を助けたい、そう思った。

 でも誰かに、その気持ちが「本当は聴覚障がい者に対する弱者擁護の気持ちから来たんじゃないか」とよこしまといを投げつけられたとしたら、僕は胸を張ってそれは違うと言えるだろうか。

 彼女を聴覚障がい者として意識すること、それが不幸なことだと認識すること、それ自体が、実は彼女を自分と同等視していないことの表れではないだろうか。

『不便ではあるけれど、不幸じゃない』 

 彼女が言ったその言葉は、彼女が僕となんら変わらない充実した個人であることを僕に再認識させた。そして、僕の美琴みことさんへの想いを一層強くさせたんだ。

 彼女は、そう、僕にとって「特別じゃない特別」。

 ただの「普通の女の子」だけど、「かけがえの無い女の子」だ。

「ちょっと、はじめっ! 聞いてるのっ?」

「え? ああ、なんの話だっけ」

「もうっ。エプロンよ! エプロンっ!」

「エプロン?」

美琴みことちゃん、どんなエプロンが好きかしら。やっぱり可愛い色がいいわねっ!」

「母さん、テーブル揺れてる」

 この光景をみたら、美琴みことさんはどんな顔するだろうか。

 そんなことを考えていると、瞳の奥にキッチンで二人が並んで楽しそうに料理する姿が鮮やかに浮かんできて、僕はいつの間にか、なんとも言えない幸せな気分にゆったりと包まれていたんだ。

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