六花の涙
神乃木 俊
六花の涙
雪が降り積もる場所に憧れていた。なにもかもが息を潜める極寒の大地で暮らしたかった。そこでならだれの優しさに怯えることなく、一人孤独を噛み締めて生きていけるから。
発光する携帯画面をぼうっと眺める。妹の
二月も後半に差し掛かり、寒さはいよいよ極まりつつある。かじかんだ両手の感覚はないに等しかった。冷え固まる指が機能するかたしかめるように、おれはなんどもなんども傘の柄を握りなおす。裸木の表面に白い雪が降り積もり、街灯は流線型の陰影で氷ついた歩道を照らしている。春はまだ遠い。
「すまん、待たせた」
どれだけの人々を見送ったあとだろうか。無防備な肩を叩かれてふりかえると、待ち人である
「久しぶりだな、
「光、良く来たな」
おれたちは再会の挨拶を白い吐息で交わらせると、相合傘をしながらアパートへと向かった。先月初旬、光から久しぶりの連絡が届いた。大学の研究室も一段落したから、おまえのところに遊びに行っていいか。そう打診されたのだ。
「しかしおまえ、えらく薄着だな」
「おれ、寒さには強いんだ」
「なんだ、それ」
土で汚れたエントランスをくぐり、あらかじめ前日に片付けておいた部屋へ光を招き入れる。荷物は部屋の脇に置くように指示する。電車に座りっ放しだったのが堪えたのか、光のあらゆる関節がパキパキと軋んだ。
「ああ、疲れた」
光は濡れた靴下をビニールに詰めると、コタツに足を突っ込んでカーペットにごろんと寝そべった。黒の下着から無防備な脇腹がのぞく。そこから腹の虫が暴れ出て、ぐうっと不甲斐ない声を部屋中に響かせた。
「飯、食ってないのか」
「まだ」
「なにか食べたいものはあるか」
「いいね。蒼のおすすめのお店を教えてくれよ」
「ここから線路沿いに行ったところに、うまいうどん屋がある」
「良いね。それで決定」
おれたちはテレビの地方ニュースを見ながら、コタツでしばらく暖をとった。せっかく出掛けるなら飯のあとに銭湯に行こう。そんな段取りも決めた。外に出かける英気を十分に養い、おれたちはうっすら濡れるコートやジャケットをふたたび羽織った。光が着替えを詰めたビニールバックを片手に、いざゆかんと意気揚々と玄関扉を開けると、みぞれまじりの強風が襲ってきた。おれの眼鏡のガラスが一気に凍りついたほどだ。寒さに
「行きたくねぇ」
「だけどなにも用意してないから、出掛けないとどうしようもない」
光はしかめっ面のまま一歩踏み出した。おれは迷った末に傘を放置し、扉の鍵を締めて先を行く背中を追った。
幹線道路の横断歩道を渡り、近くのスーパーの駐車場を横切る。将棋の駒のように並ぶ車のボンネットやフロントガラスに降雪が
しばらくして見えてきたうどん屋へ駆け込むと、暖房に感謝しつつ近くのテーブル席に腰かけた。おれは月見うどんにしようと心積もりしていたので迷わなかった。けれど光は食い入るようにメニューを覗き込んで黙ってしまう。真剣な眼でメニューをさらってぴくりともしない。
「どれもうまそうだな」
そのあとも光はうんうんと唸り続け、痺れを切らしたおれが店員を呼んだ段になってはじめてうどんとおでんのセットを頼むことに踏み切ったようだった。こいつは飯を頼むとき、最後の晩餐かのように全身全霊で頭を悩ませる。いまを楽しむことに余念がない。
「今日は泊めてもらうし、ここと銭湯はおれにおごらせろよ」
「サンキュー」
おれたちはたがいの近況報告をしながら麺を
そのどれ一つとして興味を魅かれないおれだったが、その話し振りに自然と頬がゆるんだ。光はキャンパスライフを存分に謳歌しているようだった。その事実だけでおれの心は満たされていった。
聞き役に徹していたせいでさきに食べ終わり、おでんの煮卵と格闘する光を眺めていたところ、おれはその手元に眼が吸い寄せられた。長袖をまくしあげた左手に見慣れない時計が付けてあった。銀色のベルトに英数字が刻まれた時計板。そのまわりをクリアな青が縁取ってある。美しい時計だと思った。
「その時計、どうしたんだ」
「お、いいことに気がついたな」
光はまるで新しいおもちゃを買った小学生のように得意満面に時計を取り外し、おれに手渡してくれた。てのひらにずっしりと重みを感じる。
「うちのバイト仲間に時計に詳しい奴がいて、見繕ってもらったんだよ」
「かっこいいな」
「だろ。結構良い値段するんだぜ」
おれは腕時計を身につける習慣がない。時間を確認するだけなら携帯で十分だと思うからだ。けれど光は腕時計を付けるのは、なにも機能だけの問題じゃないと力説する。
「これはおれの持論だけど、ファッションってのは究極の自己満なんだ。だからこそ着るものや身につけるものに
おれは時計を返しながらなるほどと頷いた。こういうスタンスを表明できるからこそ、光は光でいられるのだろうと思った。
おなかを満たすことを終えると、次の目的地である銭湯へさっそく向かうことにした。温まった体を冷やしたくないのでバスを利用することにする。空席ばかりのバスに揺られること数分、湯と書かれた荒びれた看板が見えてきた。建物の塗装は剥げ落ちて老朽化が進み、地元の住民によってなんとか経営が成り立っているような有様だった。
チケットを券売機で購入し、番台に渡して暖簾をくぐる。バスケットが置かれた棚に服を突っ込んで、浴場へ続くスライド式の扉を開ける。立ちのぼる湯気に視界を塞がれて肌の表面が粟立った。閑古鳥が鳴いている。ほかの客はいないようだ。
「しかしおまえ、風呂でも眼鏡を外さねぇんだな」
「極度の近視で手離せないんだ」
ひび割れた石けんで体を磨いたあと、段差に腰かけるようにして湯に浸かる。天然の石壁は
「しかしおまえ、良くこんなところに住めるな。ここで生活するなんておれには絶対に無理だ」
おれは曖昧に笑って返事を返さなかった。
だからこそこの地を選んだ、とはとても言えなかった。
すると背後で扉が滑る音がして、ぴしゃっと水を跳ね飛ばす足音がいくつか続いた。どやどやと若い声が浴場に木霊する。どうやら集団で入ってきたようだ。どこかで聞いたことがある声が混ざっている。そんなことを頭の片隅で思っていると背中に視線が集まるのを感じた。
「あれ、蒼じゃねぇ」
予感は確信に変わった。ふりかえるとそこには四人組がいた。同級生だった。こちらに奇異の眼を送っている。おれの横にだれかいることが物珍しいのだろう。湯をかき混ぜる光をあいつはだれだと窺っている。おれは四人の顔が集まる中央あたりに視線を固定したままで黙っていた。なにも言うつもりはなかった。すると光がおれの視線のさきにだれかいることに気がつき、挨拶を切り出した。
「はじめまして。蒼の友達です」
「おう、どうも」
その四人のだれからともなくそう言うと、なんともいえない空気を背負ったまま洗い場のほうへと流れていった。おれたちのあいだに浮かんでいた微妙な雰囲気。それを不思議に思った光が首を傾げた。
「あれ、友達じゃねぇの」
「いや、ただの同級生だ」
「……そっか」
おれの悪い癖が治っていないことを悟ったのだろう。継ぎ穂を失った光は握手するように自分の手を合わせると、湯を水鉄砲のごとくおれの顔目掛けて飛ばしてきた。なにが起こったか分からず唖然とするおれ。眼鏡の水滴を払うと、光は意地悪く笑っているのだった。良く切れそうな八重歯が口角の端から覗いている。
わざとおれに湯を飛ばしたらしい。カチンときたおれは湯を蹴飛ばして報復してやった。湯をもろに被った光はお返しとばかりに、無防備なおれの足を引っ張って湯のなかへと引きずりこんだ。湯を盛大に飲んだおれは水面に浮上して咽せ、そのあと怒りに任せて光の頭を湯へと沈めてやった。すると光も羽交い締めしようとやり返してくる。そういうやり取りをしているうち、たがいの闘争心にどんどん火が点き、そのままくんずほぐれつの格闘に発展していった。
光は終始笑顔だった。おれもたぶん、笑っていた。
それはとてもくだらない時間だったけれど、小学五年生のときの修学旅行に舞い戻っているようだった。おれと光とその友達数人で、こうやって浴場で暴れたんだ。引率の先生に折檻されるまで宴は続いた。忘れていた懐かしさと温かさに触れた気がした。たった数分の時間がそっと優しく引き延ばされていくようで、ただ流れていくだけの日常とはまったく異なる特別な時間を味わっているような錯覚に襲われていたんだ。
「蒼はさ、仲良い友達とかいるの」
コンビニで缶チューハイやポテトチップスを買い込み、ダラダラとコタツで酒を煽っているとソファで横になる光が尋ねてきた。おれは自分の缶を回して中身が入っていないことを確認し、両端をへこませて透明ゴミ袋に投げ込んだ。
「いないな」
「サークルとかバイトとか、ほかの奴との関わりって持ってないのか」
「なにも」
「暇なときとか、なにしてんだよ」
おれは新しい缶のプルを開けながら答えた。
「そうだな。小説読んだり映画鑑賞したり。一人でずっといるな」
「……やっぱりか」光はため息みたいに吐き出したあと真っ赤な顔を天井に向けた。
「なんか以前より雰囲気が暗くなっているし」
「そうだったか。気がつかなかった」
「蒼は危ういんだよ。やっぱり他人と一緒にいるのが嫌なのか」
おれは正直に首を縦に振った。すると光の眼が悲しい色に染まるのが分かった。それを見ているのがつらかった。自分だけの感情なら平気だ。けれど光にそんな眼をされると死にたくなる。
「傷つかないでくれ、光。おまえが悪いんじゃない」
「茜ちゃん、おまえが元気にしているか心配していたぞ。今年の正月も家に帰らなかったらしいな」
そこでばらばらだった糸がピンと繋がった。そういうことか。おれの様子を見に行くようにと茜が光をけしかけたらしい。おれは缶尻の形で濡れるコタツの表面をじっと見つめる。ストーブが空白を埋めるようにごうっと熱風を噴き出している。
「おれさ、人間に向いていないなって思うことがあるんだ」
「どういう意味だよ」
光がごくりと唾を飲みこむ音が聞こえた。おれはティッシュを手に取って水滴を拭い去る。
むかしから意思が欠落しているおれは、なにを考えているのか分からないとずっと両親に言われ続けてきた。そこに浮かぶ困惑と諦観。幼いおれは嵐が去るのをうつむいて待つしかできなかった。やがて妹がこの世に生まれ落ちると、両親の愛情は分かりやすいほどにそちらに傾いていった。それでやっとおれは安心を手にすることができた。一人の世界で完結することが出来た。
「どういう意味だよ」
「物心ついたときから、ずっとそうだったんだ」
優しい他人がいつも怖かった。側にだれかいられることに怯えていた。他人にどう見られているか頓着しないおれは、だれもいない図書館で一人本を読んで過ごしても食事をしていても平気だった。心細さは付き纏うものの、他人を気遣う必要がなくてかえって安らかだった。けれどそんなおれを心配してくれる奴らが必ずどこかにいて、そいつらが馴染めないおれをどうにかしようと躍起になり心を痛めるのだ。
それがかえっておれの心を摩耗させた。放っておいてほしかった。探さないで欲しかった。おれは人の輪に入ることが絶望的にできないのだから。
「人との付き合いってのは、きっとキャッチボールなんだよ。たがいが構えたミットへボールを投げられることが大事なんだ。けれど相手のミットの位置が分からないおれは、いつも明後日の方向にボールを投げてしまう」
べつに悲観ぶっているわけではない。哀れんでいるわけでもない。ただ一つの事実として、おれは人の機微をうまく読むことが出来ないのだ。
そのせいでおれを引き入れてくれた仲良し集団をなんど瓦解させたことか。おれの一言で優しい奴らの心をどれだけ砕いてきたことか。おれは一人になることを強く望んでいた。
なのに――
「分からねぇ。おれにはおまえの考えていることが、分からねぇよ」
おれは結局、一人にはなれなかった。ずっと心配して世話を焼き続ける奴らがいた。
光と茜だけは、おれを放っておいてくれなかった。
「なあ、蒼」光は焦点の合わない視線をさまよわせて想いをぶつけてくる。
「おまえはさ、おれのことが嫌いなのか。厚かましいって思っているのか」
「そんなことは、ない」
嫌いなわけがない。厚かましいわけがない。ずっと感謝していた。孤独の影をいつも光が照らしてくれていた。けれどおれたちは側にいてはだめなんだ。おれは光の足枷になんてなりたくない。光には輝ける世界で笑っていて欲しかった。おれに関わって世界を狭めないで欲しかった。だからおれは縁もゆかりもないこの土地を選んだんだ。自分に関わるすべてから距離を置くために。
それにこの場所でなら、一人でいることが許されるような気がしたんだ。
「『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった』」
おれがとある小説の冒頭を
「『雪国』か」
「そうだ。ずっと憧れていたんだ。この文には主語がない。主語がないんだよ。それって素敵なことだ。鳥のように高いところから世界を見下ろしているだけなんだ。おれはそれに憧れていた。良いも悪いもないあるがままの世界を、おれは自分という枠を抜けて眺めていたいんだ」
おれは世界を信頼している。人間世界に不適合なおれでも、生きていくことを世界は受け入れてくれるから。
光はなにも言わずに眼を細め、ただじっとおれを見つめていた。淡い色彩だった。冬の海のようだ。その濡れた瞳を天井に向けて肘で眼を覆い隠す。しばらくするとぐすぐすと鼻を鳴らし、やがて嗚咽を零しはじめた。
「ごめんな、光」
その涙の出所がおれであることを思うと忍びなくて、けれどその涙を止める言葉は持ち合わせていなくて、おれは飾り気のない部屋をじっと見渡しているしかできなかった。
やがて夜が静かにふくらんでいくなかで嗚咽すらも聞こえなくなると、穏やかな寝息が部屋を包んでいった。どうやら光は泣き濡れて眠ったようだ。膝に手を置いてそっと立ちあがり、寝室から毛布を取ってきて掛けてやる。額から前髪がさらさらとこぼれ落ち、ハチミツのようにてかっている。半開きの口元には涎(よだれ)が掛かっているが、表面は寒さでかさかさにひび割れている。
おれはその無防備な顔にそっと自分の顔を近づけていく。
光。おれがこの世界を信頼しているのは、自分がいなくても好きでいられるのは、この世界のどこかには必ずおまえがいると思えるからだ。そこには温かな陽だまりがいつも広がっている。他人を想う気持ちは祈りに似ているんだ。おれの祈りがちゃんと届いていることをおまえがいつも教えにきてくれるから、おれはこの世界を生きていける。
おれは自分の唇をそっと光へと押しつけた。めくれあがった薄皮がちくりと刺さり、すこしくすぐったかった。しばらくじっとしていると光の左手がぼろんと滑り落ちた。おれはびくっと肩を跳ねさせて後ずさった。
殴られるかと思ったからだ。けれどどうやらそうではなかったようで、その左手は地面に垂れたままだった。そこにはうどん屋で見せてくれた時計がはめられたままになっている。おれはそっと光のそばまで忍びよると、ベルトのボタンを押し込んで腕時計を外した。そして自分の左手に装着する。光の体温が移って腕時計は温かかった。
おれはできるだけ足音を立てないようにベランダへ近づき、カーテンの隙間からクレセント錠を外した。そしてベランダに出て、すのこのうえに座った。塀の向こう、物干し竿のあなたに広がる夜空を見上げる。そこから粉雪がはらはらと舞い落ちていく。人間にも色々な種類がいるように雪の落ち方にも個性がある。建物近くに降り注ぐ雪の速度は早く、その向こうは心なしかゆっくりだ。
おれは身を屈めるようにしてズボンのポケットから携帯を取り出し、電話帳で茜の電話番号を選択した。迷った末に発進ボタンをタップする。三回ダイアルして通じなければ切ろう。一回目が空振りに終わり、二回目も繋がらず、三回目もこのまま通じずに終わると予想した矢先、ぶつっとダイヤルが途切れた。
「もしもし、お兄ちゃん」
「あ、あかねか」
「そうよ。どうしたの、こんな時間に」
通じるとは予想していなかったもので咄嗟に言葉が出なかった。おれの顔を見に去年遊びに来て以来だから一年ぶりの会話になる。長い隔たりを感じる。
「いや、なんとなく。茜と話したくなったんだ」
「そうなんだ。私も嬉しいけど、こんな時間じゃなかったらもっと嬉しかったな」
時計を見遣る。すでに時計の長針は頂点を跨いでいた。申し訳ないことをした。
「ごめん」
「ふわぁ。良いよ。それで、どうしたの」
「それが」
おれは頭に浮かんでくる事柄を順序関係なく、しかしながら脚色することなく喋ることにした。自分が人付き合いをあまり好きでないこと、だれも知らない雪国での生活にずっと憧れたこと。それから光がいまここに来ていること。すると電話の向こうの茜の声が跳ねた。
「良かったね。光さんが来てくれて」
「やっぱりおまえが光をけしかけたのか」
「うん。そうでもしないとお兄ちゃん、ガードが硬いから」
苦笑していると、茜がふわっともう一度眠たそうにあくびした。
「お兄ちゃん、たまには実家にも帰って来なよ。お母さんたち心配しているよ」
「そっか」
「あんまり難しいことばっかり考えちゃだめだよ。生きていればいいこともあるから。私、もう眠いから寝るね」
「うん。お休み。茜と話せて良かった」
「私もお兄ちゃんと話せて楽しかったよ。それじゃあ、またね」
電話が切れると、おれはくしゃみをして寒空を見上げた。勢いを増した雪がとめどなく降り続けている。寒さはこの体に浮かぶ余分な感情を凍らせていく。てのひらを空に向けて広げてみる。するとひとひらの雪がするすると舞い降りてきた。完全な六花の形だ。それが雫(しずく)に変わっていくのを見送り、おれはじっと体を縮めて左手の時計を眺めて呟いた。
「『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった』」
夜の底が白むまで、あとどれくらいだろう。分からない。それならば待てばいい。きっと凍死はしないはずだから。時を刻む時計の針。その規則正しい、チクタクという音色に耳を済ませる。
春の目覚めは、もう間近に迫っていた。
六花の涙 神乃木 俊 @Kaminogi-syun
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