第164話 図書館の主

皆様お元気ですか?

書籍版、読んでいただけたでしょうか。

作者のモチベのためにも是非お願いします!


さて、書籍版に関係するSSなのですが、これが2つあって、1つはこれ。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888105601

カクヨム内のレーベルページに置かれているモノなのですが。

もう一つはKADOKAWAアプリというアプリ内からダウンロード出来るモノでして、私はスマホを持ってないのでチェック出来ないのですけど、書店で購入したレシートを読み込んで溜めるポイントで交換出来るらしいです。

内容的には物語の前日譚プラスαみたいな感じです。

是非チェックしてみてくださいね。



――――――――――――――――――――――――



 これは興味深い内容だ。

 これまで様々な場所で本や資料を調べてきたけど、歴史とか政治とか国の内情にまで踏み込んだ書物はこれが初めてかもしれない。やはり不特定多数が閲覧出来るギルドの資料室より、一部の人しか入れない場所にある書物はそれなりに重要なものが置いてあるのだろう。

 それにしても、やっとなんとなくこの国の状況というか、この世界の政治とかが見えてきた気がするな。これまで、国を王と貴族が支配してるという話はふんわりとは聞こえてきていたけど、細かい政治的な話になると誰もよく分かっていなかったから知ることが難しかったしね。

 まぁ、王族と貴族が偉くて逆らっちゃいけないという部分さえ理解しておけば、あとは一般庶民には大きな意味はなく、普通に暮らしていくには必要ない情報なのだろう。

 地球の、その中でも進学率がそこそこ高いはずの日本であっても政治に関して詳しい人は少ない。皆なんとなく必要な情報をふわっと理解しているだけで、自分の生活に直接必要のない情報を知ろうとする人は少ないものだ。

 本を棚に戻し、また本探しを再開する。

 まずはとりあえずどんな本があるのか一通り確認する予定だったけど興味深い本をいくつも見付けてしまい、パラパラと読んでしまった。

 手を止め、ガラス窓の方を見る。

 朝とは入ってくる光の長さが違っていて、部屋の温度も少し上がっているように感じる。既にこの資料室に来てから数時間は過ぎたのだろうか。なのにまだ全体の半分もチェック出来ていない。


「ふふっ……」


 自然と笑みがこぼれ、声に出てしまう。

『知識欲を満たせる』

 その事実になにかの感情がわき起こり、体の中を駆け巡る。

 やっぱり色々と知っていくのは楽しい。それに、それはただ知識欲を満たすだけには留まらず、自分の中に蓄積され、この世界を生きるための血肉になる。こんなに楽しいことはない。

 そう感じながら本棚の前を歩いていると部屋の奥に木製の扉が見えてきた。

 その扉がなんとなく気になり、マギロケーションの範囲を調整したりして扉の先がどうなっているのか探りながら歩き。扉の前で立ち止まって、中の様子を窺ってみる。

 マギロケーションの反応的に中は無人。扉の奥は部屋になっていて、そこにも本棚があり、本が詰まっているように感じる。この部屋も資料室の一部なのだろうか? それとも図書室とかにある予備の本をしまっておく部屋だろうか? それとも……。


「ふむ」


 一瞬どうしようかと悩み、物は試しと丸いドアノブに手をかけ回してみる。が、ドアノブはガチャガチャと音を立てるだけで回らない。どうやら鍵がかかっているらしい。


「関係者以外、立入禁止だから」

「えっ?」


 後ろからの声に振り向くと、そこには黒いローブで頭まですっぽりと覆った背の低い女性が立っていた。

 いや、マギロケーションで彼女が近づいてきているのは分かっていたけどね。


「関係者?」

「そう」


 そのそっけないその返事に少し驚きつつ、胸元の黄金竜の爪のバッジをつまみ、彼女へと見せるように強調してみる。


「それではダメ」

「ですよね……」


 どうやら黄金竜の爪のメンバーというだけでは入れないらしい。

 う~ん、この先にはなにか重要な本が保管されているのだろうか。一般メンバーが見ることが出来ない本……禁書のような危険な本や、あるいは重要情報が書かれた資料とか。そう考えるとこの先の本への興味が湧いてくる。ここの部屋の本でもこれだけ面白い本が揃っているのだから、関係者以外見ることが出来ない本にはなにが書かれているのだろうか。

 ここに入るには誰の許可がいるのかな? クランマスターの許可なら流石に大丈夫なはず。とりあえずミミさんに掛け合ってみようかな。彼女は僕が情報を欲しがってこのクランに入ったことを知っているし、考えてはくれるはずだ。


「クランマスターの許可があれば大丈夫ですか?」

「ダメ」


 えぇ……クランマスターの許可でダメなら誰の許可があれば入れるんだ? ミミさんかな? 彼女はある意味でクランマスターより強い権限を持ってそうというか、実務は彼女がやってそうな感じだったし、ありえそうだけど。


「じゃあ誰の許可があれば入れるんです?」

「私」


 一瞬、『は?』と言いそうになるのを寸前で堪える。


「ここ、私の部屋」


 彼女はそう言葉を続けたのだった。

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