止まらない波㊽

 フリシュラ・ベベットという少年が、アリナの弟と同様に〝異端の才〟の持ち主であったことは、なんとも皮肉な話である。

 当時のトップエージェントとして名を馳せていたアリナの父ですら、その事に気付けなかったのは、フリシュラ・ベベットという少年をただの十一才の少年として甘く見ていたからと言う理由だけではなく、当のフリシュラ・ベベットという少年が、それだけ巧妙に自分の才覚を秘匿していたという証左なのである。

「その、フリシュラとかいう人は今どうしているの?」

「それがさっぱり分からないのです。弟は、フリシュラ・ベベットが犯した罪をそのまま擦り付けられて当局に拘置されてしまったのです。そして……」

「そして……?」

「そして、そのままジェイソンは〝永久拘置〟の処分を受けてしまったのです」

「永久拘置……」

 永久拘置とは、当時のヴェルデムンド新政府が行った極刑に値する処分である。

 永久拘置の拘置とは名ばかりに、その内容は洗脳と改造を主体としたものであり、拘置された本人に〝活用〟と判断された場合によっては〝ダーナフロイズン〟などの大型人工知能の一ユニットとしてシステムデータの一部にされる処分である。

「そ、そんな……」

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