止まらない波㊱

「なるほどね。じゃあ、本当の〝マキナ〟さんは、どこかに居るってことなのかな?」

 小紋が問うと、

「それもどうかは分かりません。確かに浮遊戦艦に囚われでもすれば、その可能性もありますし……」

「ありますしって、アリナさんは、それ以外の可能性があるって思うの?」

 アリナは、ただされて少しだけ戸惑った。しかし、一旦間を置いてから、

「その〝検体〟は、もう亡くなっている可能性もあります」

「けんたい……?」

 小紋は胸をえぐられた。検体と聞いて、酷く嫌な予感がしたからだ。

 アリナの様子からすれば、その予想もまんざら的外れでもなさそうである。

「これは、わたくしが戦乱の以前から集めていた情報なのですが……」

 アリナはそう前置きし、

「小紋様は、ゲッスンの谷の攻防の話はどこまで知っておいででしょうか?」

「ゲッスンの谷の攻防ってもしかして、あの戦乱の最中に正太郎さんが潜入工作したあの話……?」

「ええ、そのゲッスンの谷の攻防です。そしてあの当時、ゲッスンの谷では様々な憶測が流れておりました」

「憶測……?」

 アリナ曰く、当時の新政府軍は反政府活動で捕らえた人々をデータとして細分化し、その活動内容を思考データとして蓄積していたと一部で囁かれていたというのである。

「しかし、収監された人々の生死は不明のままなのです」

「じゃあ、もしかすると……」

「おそらく、小紋様のお考えの通りだと思います。わたくしとて、実の弟を捕らえられたまま、未だ行方などしれませんし……」

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