止まらない波㉚
「そ、そんな!? まさか……!?」
正太郎は、腕の中に巨大な違和感を覚えた。それは正に、人間の類いではあり得ない肉体の膨張である。
「おい、チェカ!!」
正太郎が本能的に彼女の身体から離れると、チェカの肉体はさらに膨張を重ね、
「まさか、キミまでも……!?」
とうとう身の丈十メートルをも超えるほどの巨人の姿に変貌してしまったのだ。それは、数十メートル先で破壊の限りを尽くしているチェン・リーのなれの果ての姿とうり二つであり、髪型やその色だけが元の人物像の名残を示しているだけである。
「馬鹿な、チェカ。なんで……!?」
彼の中でも、実直で優秀な部下と評価が高かったチェカなだけに、正太郎は残念でならなかった。そして、彼女には自らの力で幸せを掴んで欲しかった。それは、伴侶となった小紋や、まるでまだ見ぬ我が子を見るように接して来たエナ・リックバルトとは一線を画した感情が芽生え始めていた矢先の出来事なのだ。
「ぐあぁっ!!」
チェカのなれの果てが、元の姿にも似つかない激しい雄たけびを上げて暴れ回っている。その異様なまでの振る舞いは、まるで人間の理性の一かけらも感じさせない。
「あの白いバラのように可憐で美しかったチェカが……」
あのように狂った無機生物の様相に一瞬で変化してしまった。これはいかに強靭と
「クソッ! 何だってこんなことになりやがるんだ!? この世界は狂っているにもほどがあるぜ!!」
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