止まらない波㉘

 アリナいわく、この集落にはダーナフロイズンの差し金で複数のアンドロイドが人間に成りすまして潜入しているとのことである。

 彼らは以前にも増して精巧に出来ているがゆえに、顔かたちからそれまで本当に存在していた人物の性格まで完全に模しているらしい。

 小紋がそれまでに知るアンドロイドと言えば、マリダ・ミル・クラルインが最高峰である。

 無論、マリダ・ミル・クラルインはずば抜けて優秀な頭脳と高感度センサーを持ち合わせた美麗なアンドロイドである。つまり、これまでのアンドロイドとは、より高性能で、より完璧に近い美しさや均整の取れたプロポーションを有していることが常であった。

 だがしかし、この目の前に木の枝を突き刺されたアンドロイドはどうか?

 そう、この目の前にぐったりとこうべを垂れた存在は、まるで不完全な人間そのもの。マキナ・ベルナドールの名をかたったアンドロイドは、ありのままのどこにでも居そうな一介の中年女性の姿をしたものである。

「小紋様。これでご理解いただけましたか? もはやこれまでとは時代が変わってしまったのです。アンドロイドという存在は、もう我々が知るアンドロイドたらしめるものではなくなったのです」


 ※※※

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