止まらない波㉗

「な、何を仰います、小紋様!! ただ、私は……!!」

 女が慌てふためいて語気を強めたと同時に、

「今です、小紋様!!」

 アリナが扉の開錠を促した。

 その時、小紋とアリナ背後に待機していた二人の護衛が扉の外に突進する。

「それっ!!」

「えいっ!!」

 エイミーとノエルの体さばきは、一陣の風をまとったかのようにくるりとつむじ風を巻き起こすと、扉の向こう側に居る者の背後を捕らえた。

 二人に腕を雁字搦めにされた人影は、一瞬何が起きたのかさえ理解出来ない表情で、

「ナンダ、オマエタチハ……!?」

 たどたどしい言語で二人の束縛から逃れようとした。しかし、

「観念するのだな、ダーナフロイズンの手先め。この人の姿をした機械人形めが!」

 アリナが熱のこもった言葉と共に、捕らえられた人物の胸に鋭く尖った木の枝を突き刺す。

「ア、アリナさん! そんな……」

 小紋が焦ってアリナの手を引こうとするが、

「ご安心ください、小紋様。こやつは機械神側の手先です。これこの通り、血など一切出てきておりませぬ」

 言われて小紋は、突き刺された木の枝の根元を凝視するが、

「ああ、本当だ。で、でも、なぜ……」

「はい。わたくしとて、こんなむごたらしいことは致したくありません。ですが、こうしなければ小紋様はこのアンドロイドに命を狙われていたかもしれません」

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