完全なる均衡㊱

 〝ハヤブサ隊〟の月永平助と呉懐祐が、〝マグナム隊〟の生き残りであるシェンナ・シェンカーを引き連れて第一ポイントへと向かう一方で、

「チェン!! チェン・リー!! あなたって人は!?」

「そ、それはこっちのセリフだ!! チェカ、あんたは俺の言う通りにすればいい!!」

 無事、先行した〝ジャンク隊〟と合流を果たした〝デカメロン隊〟のチェン・リーであったが、そのざわつきに気づかれた彼らは数体の凶獣ヴェロンの群れに遭遇していた。

「おい、ジャンク隊! お前らはお前らで奴らを仕留めろよ! 俺たちは俺たちでこっちのでかいのを仕留める!!」

 チェン・リーの横柄な言い様に、

「今はそんなことを言っている場合ではないでしょう!? ハザマ教官に言われたことを忘れたの!?」

 上空からきりもみで特攻を仕掛けて来る凶獣をよけながらチェカ・レビノホフが巨木のであしらえた槍を虚空に構える。

「チェカ、あんたはあの男の言うことを聞き過ぎだ! 所詮あの男は、この俺の足元にも及ばない」

「ええっ、なにか言った!? 何か特別な指示があるなら、もっと大きな声で言って!!」

「うるさい! あんたは黙って獲物のどこかにそいつをぶち込めばいい! それでやつはバランスを崩す!!」

「分かってるわ! でも、それが一番難しいのよ!!」

「体を張って仕留めるのはこっちだ! 命の危険にさらされにくいあんたなんかにとやかく言われる筋合いはない!!」

 猛り狂った凶獣は四方八方から攻めて来る。そんな攻撃の中を、

「えいっ!!」

 チェカ・レビノホフが放った小枝の槍が一体の凶獣の喉元に突き刺さった。

「やった!」

「あんたにしては上々だ、ならば……!!」

 チェン・リーが金属の硬度にも匹敵する岩石を磨いて作り出した短刀を両手に掲げ、

「アチェイ!!」

 と宙を捻り一閃! 瞬く間に凶獣の首周りに鋭い亀裂が入り、首と胴が空中分解を起こして目の前の巨木に激突した。

「やったわ!」

「へへへ、当然だ。なにせ、この俺がやったんだからな」

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