完全なる均衡㉞
時代の流れが、〝ヒューマンチューニング施行法〟へと強く方向転換を迎えていた頃の話である。
ヴェルデムンドの戦乱と呼ばれし時代に差し掛かった辺りには、多くの人々が見たくもない現実と情報に背を向けていた。
そのためか平助の娘のように、
「人の考えはそれぞれなのよ!!」
と大言を吐きつつも、自らが選んだ道を歩んでいるつもりが自分では何も考えず、実際には大きな流れに身を
人は、その特性から常に錯覚を起こし続けていると言われている。月永平助は、そんな錯覚を起こし続けてる世界の流れに、
「
という思いで反乱正規軍へと参加したのだ。
(だがしかし、優菜……)
月永平助は、大切な娘を凶獣によって命を奪われ、作為的なテロリズムの
「カイどの、私はこの子を守り抜く。この私の命に代えてでも!!」
「応!! しかとその言葉聞き届けましたぞ、ヘイどの!!」
一方その頃、
「なんだと!? 空が
正太郎は上空の異変に気付き、速足を止め、その場に立ち止まった。
「ま、まるで、世界が猛り狂っちまったみてえだ……」
誰よりも夜目が利く正太郎である。がゆえ、その異常に群れを成した凶獣の飛び交う様子が手の取るように分かる。
彼が今から助けに向かう方角には、その数にして四、五十体は下らないヴェロンが暗夜にうねうねとしたコントラストを描き続けている。
正太郎には、ひどく感じるものがあった。
「こ、これはもしかすると、何らかの前触れなのかもしれねえ……」
彼の戦士の勘が、こういった状況に意味のあるものを想起させるのである。
「ヘイさん、カイさん! 俺が行くまでもってくれよ!!」
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