虹色の細胞㊹
おそらく、取るものもとりあえず必死になって泳いできたのであろう。見れば彼女は素っ裸のままである。明け方の海中とは言えど、かなりの透明度を誇るこの世界の海では、まるで彼女は半人前のマーメイドさながらにその美しい肢体をさらけ出していた。
「悪かったな、黙って出て行って……」
「良かった……。またはぐれちゃうんじゃないかって……」
彼女は、同じように丸裸のままの正太郎に必死でしがみつき、
「もう、離れるなんて絶対に嫌だからね、僕……」
「僕? お前、元に戻ったんだな」
「もとに? ああ、そう言えば……」
小紋は慌てて口元を抑える。
「なるほどそういうことか」
「なにが?」
「ああ、俺ァ今、現実と幻想の狭間を見て来たのさ。この俺の生まれ出て来た世界の……」
「え?」
「それで分かったのさ。元からお前は可愛い奴だってことをな」
※※※
「これで
鋭い眼差してモニターを見つめるゲオルグ博士のなりをした鈴木源太郎博士は言うや、
「まだどこかに、この世界の平衡に相反する存在が残されているということじゃ」
その言葉と同時に、会議室に一堂に会した者たちの表情が強張った。
「それは正しく、羽間君のことですな?」
大膳は言った。
「そして、それに支持するお前さまの娘殿も同じことじゃ」
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