虹色の細胞㉞

 森の切れ目に差し掛かった時、二つの陽の光が彼らの機体を包み込んだ。二つの光が次第に重なり合わさったとき、

「チッ、もう始まっちまってたのか!?」

「な、なにが!?」

「世界の融合さ。こっちとあっちの世界とのな!!」

「そ、そんな!?」

 心で繋がり合う二人が同時にその場に存在していたのは、これ幸いである。二つの世界の融合は他の世界の同じ存在を全てに融合させ、それは元あった別世界のそれぞれの自分という存在を飲み込んでしまう結果にある。

「小紋、手を!!」

「はい!!」

 これで二人はどこに行くこともなかった。ただ、その他の存在は、他の世界の存在との融合を果たし、それらは今までとは違う別の存在として何かを生み出してしまうのである。

「よし、陸地が見えた。着地するぞ!!」

「了解!!」

 それは見たこともない光景だった。確かにそこは以前に見たヴェルデムンドのものではない。それどころか、かつての地球のどこぞの僻地の姿でもない。

「へへっ、これじゃまるで、異次元の世界だな」

 正太郎も小紋も、かつてのヴェルデムンドに初渡航で地に足を着けた時にそれを感じた。その世界は、見た目も違えば、なぜか漂う大気の匂いもまるで違う。異世界、異文化、異様な何かをそちらから訴えかけるほどに、探りを入れずとも、その異質な何かを感じざるを得ない。

「とうとう、やっちまったんだな、鳴子沢さん……」

「これって、本当にお父様がやったの? ねえ、羽間さん……」

 地面はなぜかまっ平だった。そして、海は静かに存在していた。だが、その遠く向こう側には、かつてのヴェルデムンドに見た巨木の森が鬱蒼と生い茂っている。

「あれはまだ存在するんだね」

「ああ、あれは俺たちの世界の勿忘草わすれなぐさだ」

 

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