虹色の細胞㉛
※※※
「もうっ! いつまで、二人の世界でいちゃいちゃしてんのよう!! ここにはあたしも居るんだからね!!」
エナ・リックバルトが、モニター越しにあからさまな焼きもちを焼いて見せると、小紋も正太郎も目を見合わせて、
「へへっ、エナ。分かってるって。お前はいつでも可愛いよ。だがな、それとは別に、ここでお前にやってもらいてえことがある」
「藪から棒に何よ、一体?」
ほっぺたをぷっくりと膨らましてエナが問うと、
「烈太郎を探して来てくれ」
「えっ? 烈太郎君を?」
「ああ。俺ァ、あの戦乱以来、あいつが居ねえと調子狂っちまうんだ」
「あたしだけじゃダメなの?」
「ああ、すまねえ。さすがに戦闘力ってえ部分じゃ、あいつには分があるんだ」
「そうなのね。まあ、そんなこと考えなくても分かってはいたけど……。つまり、最終的にはそこそこの軍隊を引き連れないと勝てない相手だってわけね」
「ああ、そうだ。なにせ相手は……」
そこで正太郎は押し黙った。そして、後部座席の小紋に目をくれる。
「もしかして、それって……」
小紋は何かを察した。なぜか、小紋にも思い当たる節があったからだ。
「すまねえな、小紋。俺が何と戦って来たのか、やっと気づいてくれたか?」
「それってやっぱり、お父様のことなの?」
「そうだな……。それはそうとも言えるし、そうじゃねえとも言える」
師にそう言われてしまえば、それで納得するほかはない。
「だから羽間さんは、お父様の所から姿を
「良く知ってんな、そんなこと」
「知ってるよ。だって、クリスさんが、それなりに一部始終を教えてくれたんだから」
「そうか、クリスちゃんがね……。それで彼女は、あっちの世界で元気にやってんのか?」
「ううん……」
小紋は首を振った。
「だって、あれを見たでしょ? さっきのあの変な怪物の姿……」
「そう言やあ、確かにアレはクリスちゃんの姿に似てた気がすんな」
「囚われちゃったんだよ。二分の一のサムライとかいう……羽間さんの姿をしたアンドロイドに」
「なるへそ。確かに一時期、俺の姿をしたっぽいリモノイドが俺の行く手を阻んだことがある。それが、クリスちゃんを攫って行ったってのか。それも、子供を腹の中に宿した最中に?」
「そうだよ! だから、わたしは……!!」
小紋が熱を帯びた声で何かを言いかけた時である。いきなりフェイズファイターの後部から不敵な振動が伝わって来た。
「いけねえ、ヴェロンだ!! 凶獣の群れがやってきちまった!!」
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