虹色の細胞㉙

「えっ?」

 言った本人がはハッとした。。今の今まで正太郎に言われるまで気づかなかったのだ。

「い、いや、わたし……いや、僕……。あれ? どうなっちゃってんの?」

 小紋は訳が分からなかった。自分で自分の呼称が、知らぬ間に変わっていたからだ。

「ふうん、そうか。お前も大人になったんだな」

 正太郎はあっけらかんと言うが、

「そんな!? わたしはそんなつもりなかったんだけど……」

「いいんだ、お前はそれで」

「何がいいの? わたしはわたしだし、以前と何も変わらないよ!?」

「ああ、知ってるさ。だがよ、始まっちまったんだ。世界の融合が。この世界と地球との融合がな」

「この世界と地球の融合って……」

「ああ、そのまんまそっくり世界の融合さ。とうとう、人間と人間もどきとの決戦の火ぶたが切られたんだ」


 ※※※


「さあ、とうとう始まりますな、大膳殿。これで、あなたの長年の苦労が報われます」

 リゲルデ・ワイズマンは、肉体に起こる変化に充実感を覚えていた。

 彼は望まぬとは言え、成り行きで融合種ハイブリッダーとなり、それが人類の革新であるとは思わなかった。しかし、こうして二つの世界の融合が果たされようとしたとき、なぜか根本的な理由こそ分からないが、その肉体と精神に満たされるものを感じていた。

「そのようですな、ワイズマン殿。しかしこの私も、ここに来て何やら得も言われぬものを感じております。この肉体の一部を機械化させた身にありながら、得られるものと言えば、それは……」

「ええ。間違いなく、他の世界の知恵と経験というものであります」

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