虹色の細胞⑥


 小紋は辺りを見渡し、いそいそと食べ終えた食器を片付けると、

「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

 と、丁寧に頭を下げてその場を去った。

 満足感が全身に走り抜けていた。確かに他人様ひとさまの物を勝手に食べてしまったことへの罪悪感はあるものの、この弱肉強食の世界で生き残るすべとしては間違っていない。

(地球での常識とは違うんだよね……)

 彼女はそう思い込むことで、前に歩むことを決断した。

 それから小紋は、三体のローゼンデビルと二体の凶獣を撃破した。

 ローゼンデビルは地を這って攻撃して来る敵である。それだけに、彼女が取った攻撃は、十連装のクロスボウを真正面から撃ち込んで倒すという単純な方法である。この方法なら、貴重なクロスボウの矢を消失することもなく、また再利用出来るからである。

 だが、凶獣に至ってはそれが可能ではなかった。

 凶獣ヴェロンは、基本が一撃離脱の体当たりをぶちかまして来る敵である。それゆえに、構えて来たところを撃ち込んでいたのでは間に合わない。

 だからこそ小紋は、長期戦となることをけ、凶獣の姿を確認するや、

「当たって!!」

 とばかりに、その凶暴な体躯に見つかる前に狙撃を行っていたのだ。

 しかし、

「こんな事なら、羽間さんにもっとクロスボウを習っておくんだった……」

 小紋は、この二体の凶獣の狙撃に、五本の矢を消費してしまった。無論、二体の凶獣は完全に打ち負かしたのだが、超高速に飛空を重ねるヴェロンはそう簡単に狙撃出来るものではない。

「羽間さんは、あんなに簡単にやって見せてくれてたから、もっと僕も出来るもんだと勘違いしちゃってた……」


 

 

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