見えない扉㊻
その時、彼女の師である正太郎はこうも言い足した。
「だから俺ァよ、こうしてお前と時を同じくしている理由はな。お前にそうなって欲しくねえからなんだ。もしかすると、こんな概念を知っちまうと、何事も素直に受け止められねえ頭になっちまうかもしれねえけどよ。それでも俺ァ、お前には知って欲しかったんだ。こんな俺なんかに、ここまでしがみついて来てくれたお前だけにはな」
「羽間さん……」
「だがよ、覚悟しておいてくれ。この考え方を知っちまった限りは、もう後戻りは出来ねえぜ。もうお前は、俺と同じこっち側の人間なんだ」
小紋はこの一件を思い出した時、カレンバナとの遭遇のやり取りが、あまりにも不毛であること悟らざるを得なかった。
「まさか本当にこんなことが……。僕たちはお互いに呪いをかけられていたんだね」
これは看護アンドロイド、フェフェリに仕掛けられた呪いなのだろうか? それとも、あの飄々としたサトミル女史が仕掛けてきた罠なのだろうか?
しかし、小紋にはどうにも判断がつかなかった。サトミルもフェフェリも見た目は良い感じの人物である。無論、フェフェリはアンドロイドであり人間ではないものの、彼女は女王に君臨するマリダ・ミル・クラルインの同系の由緒正しいドールなのだ。そんな彼女たちをそう易々と疑い切ることなど出来やしない。
「なら、もしかして、本当にあのカレンバナさん自体が〝五次元人〟だという可能性も……」
言って小紋は首を横に振った。無論、そんなことは考えたくも無かった。もしそれならば、カレンバナとて、その様相を危惧して自ら立ち去るはずもない。
考えれば考えるほど、小紋はドツボに嵌まった。ここに来て、何が本当で何が虚飾なのか判断が付かなくなってしまったのだ。
「ああ、羽間さん……。僕はこれからどうしたらいいの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます