見えない扉㊴
小紋は気配を消すために息を止めた。もしやもすれば、もう感づかれている可能性もある。
だが、ここは定石どおりに気配を消し、そして敵を迎え撃つ体勢を取っておかなければならない。
端末の記号がそこで止まった。どうやら、相手も小紋の気配に気づいてしまったようだ。
「あのアンノウンとの距離は、直線距離にして五十メートル圏内……。このクロスボウの正確な直接射程距離は約三十メートルと言ったところ。所々にある草派の障害物を差し引いても、二十メートルが限界だよ……」
言わずもがな、この世界は巨木と巨大な木の葉で覆われた密林である。いきなりそのような障害物から敵が飛び出して来たとしても、かなり前に遭遇したローゼンデビルのように打ち負かせるとは限らない。
「あれは真正面から襲って来るだけの単純バカな生き物だったから」
小紋はそう言って、自らの恐怖心を押し殺した。未知なる者との遭遇は油断が命取りになる。
小紋が息継ぎの間を取った。もう一分近くが経過したため、息が持たなくなったのだ。
その時である――
「その息遣いは、もしやして……。鳴子沢さま?」
巨大な草葉の向こう側から、聞き慣れた声が及んできた。
「え? もしかして、その声はカレンバナ……さん?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます