全世界接近戦㊼


「相手の意識が、現実の話って……? 一体、それどういうこと?」

 小紋は、可愛らしい瞳で素朴に問い掛ける。

「へへっ、何だよ小紋。お前、そういうの当局のレクチャーかなんかで教えられなかったのか? そんなんじゃこの先、あんな厳しい仕事なんかやってけねえぜ?」

「そんなこと言ったって……。羽間さぁん。ねえ、弟子の恥は師匠の恥だって言うでしょう? きちんと全部教えてよう」

「お前なあ。ちゃんなのにもほどがあるだろ。そう言うのは、もっと世間の地固めをしてからだなあ」

「まあた、お説教なのう? お説教はもう聞き飽きたんだけど……」

「ああもう。んったく、お前ってやつは……」

「だってえ。羽間さんたら、答えを教えてくれるよりも、お説教の方が時間が長いんだもん……」

「バッキャロー!! この俺が、その答えにたどり着くまでに何年掛かったと思ってんだ!! 答えってのはな、自分で手繰たぐり寄せて自分で導き出すもんなんだ! 他人に教わって、はいその通り出来ましたって褒めてもらうもんじゃねえ!!」

「わあ、ごめんなさい! 羽間さん、怒んないでえ!!」

「いいか、小紋! この際だからはっきり言っておくが、答えってのはな、その時代時代や、それぞれの相手や、様々な環境や状況によって全く違うものが導き出されるんだ! ちょっと前に他の奴が、その答えで上手くいったからって、それと同じことをして上手くいくと思うな!!」

「そうなの?」

「そうだよ! 確かに、先人の知恵とケーススタディを学ぶことによって参考にはさせてもらうが、状況も変われば、戦う相手だって中身は全然違う。それだけに、教科書に書いてあった通りに事を運んだところで、万事が上手く行くとは限らねえんだぜ?」

「そ、そうか、そういうことか……」

「だからだな、特に見えない敵に対しては、を追って考える必要が出て来るんだ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る