全世界接近戦㊻


「目に見えてないのに敵が見えるって、羽間さんらしくないよ。そんなオカルトみたいな話……」

「ば、馬鹿っ!! いつ、おれがオカルトの話なんかしたよ。つうかお前、そういう言い方はここだけにしとけよ。俺たち商売人の間じゃ、売り先や買い先相手とは宗教と政治とプロスポーツチームがらみの話はご法度なんだからな。たとえお前が、俺みてえな商売人でなかったとしても、他人との確執を生みたくなければ、ぽろっとでもそういうのは口にしない方が身のためだぞ」

「ふうん、なるほどねえ……。さすがの羽間さんでも、そういった気遣いはするんだね」

「何言ってんだ。そんなのあたりめえだろ。人は一人じゃやってけねえんだ。特に互いの腹の探り合いをする商売ってえ世界に至ってはな」

「うん。確かにそういう話は為になるけど、なんだかそういうのを、元反乱軍の中心人物だった羽間さんが言うのも変な気がするけどね」

「ほっとけ。今日のお前は一言多いぞ」

「ははは、ごめんなさい。つい羽間さんの前だと甘えちゃって……」

「へへっ、ならまあいいや。つまりだな、小紋。そうやって、いつの間にかお前の周りに敵が出来ちまったとしても、その敵の相手つうのはなかなか姿を見せない場合ってのもあるんだ」

「うん」

「だがな。どんなに姿が見えなかろうと、絶対に目に見えて来るものがある」

「え? 姿が見えないのに、目に見えて来るもの? それって?」

「ああ、それがだ」

「相手の意識? また怪しい話?」

「馬鹿! これはオカルトなんかじゃねえよ!! 現実の話だ!!」



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