全世界接近戦㊵


 シグレバナの絶望の声色に、当のカレンバナも凍り付いた。

「み、見えない……!? シグレバナさんのセンサーにも、何も映らないだって!?」

 小紋は当惑した。これだ。これが、あったんだ……と。

「もしかして、これは、あの時の……!?」

「そうよ、カレンバナ! これは、以前にあの森の中で感じた敵の感覚ですわ!」

 それは、三人が旅立って一夜目に遭遇した恐怖のことである。

 あの夜、元87部隊の二人は、初めて進化した凶獣ヴェロンと対峙した。彼女たちは、進化した凶獣と立ち合い、自らの遅れた能力に憤りを覚えた。

 しかし、その憤りはそれだけではなかった。

 彼女たちは、凶獣と遭遇する直前に、ただならぬ者の襲撃を受けた。

 それは――

「同じですわ! この武器……!!」

「これは、あの時の銀色の円月輪……!?」

 見えない場所から飛び交って来る銀色の光の筋は、前方に構えたカレンバナの首筋を執拗に狙って来る。

「カレンバナさん、けて!!」

 小紋は咄嗟に間に走り込むと、腰のホルダーに携えていた電磁トンファーを振りかざした。

「えいっ!!」

 気合一閃で打ち払った銀色の円月輪を、激しい音を立てて跳ね返すが、

「し、しつこい……!!」

 カレンバナの焦燥の声とともに、また至る所から銀色の筋が舞って来る。

「やあ! えい! やあ!」

 滴る汗を構うことなく、小紋ははえの如くたかりまくる円月輪を打ち払い続ける。

「見えない、見えないわ……。身共には全く見えない……」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る