全世界接近戦㊴


 小紋は、俊敏に動く美麗な二人の後ろ姿を見るたびに思うことがある。

(これで機能のアップデートすらしていないなんて……。じゃあ、あの戦乱期には、どんな感じだったんだろう)

 どうあがいても、最新機能を備えたここの住人よりも戦闘力は上である。

 練度と言う面からなら、元87部隊の二人の方が優れているのは理解できるが、それを超える機能を有したはずの自治区の住民が、こう易々と倒されてゆく様は、見ていて疑問しか残らない。

(だけど、僕はこのままじゃ終わらないような気がする。だって……)

 彼女が、そう思った瞬間――

「いけません!! カレンバナ!!」

 先頭を行くカレンバナの背中越しに、シグレバナの叫び声が及んだ。

 言われたカレンバナは、すぐさま身体をぐるりと反転させ、くせっ毛の強い長い髪を振り乱すと、

「あうっ……!!」

 うなじの辺りに、鋭い刃物のような冷たいものを感じた。ひと筋の鮮血が滴る。

 同時に三人は、背筋に冷たいものを感じた。これまでの空気が一変したからだ。

「なに奴!?」

 カレンバナは体勢を立て直し、地を這うような構えで辺りを見渡した。

「カレン! 気を付けて!! こ、これは……!?」

 シグレバナは、焦りを隠せぬまま前方のカレンバナに声を掛けるのだが、

「シグレ? どうしたって言うの!? 見えないわ! 身共のセンサーではつかめない! だから、早く相手の居場所を教えて!!」

 しかし、

「だ、だめなの、カレン! 身共のセンサーにも、敵の影が映らないわ!!」

「な、何ですって!?」


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