全世界接近戦㊳
島崎宗孝の思惑通り、攻めあぐねていた第807自治区に足を踏み入れた鳴子沢小紋と元87部隊のカレンバナとシグレバナであった。
しかし、その足取りは順調すぎるほど順調で、三人は次々と番兵を打ち倒すと、格納庫の隠し通路と思われる出入り口にまで及ぶことが出来た。
「さあ、ここからが本番だよ、お二人さん」
小紋は、真剣な眼差しをカレンバナとシグレバナに送った。
「ええ、心得ておりますわ、鳴子沢さま。ねえ、シグレバナ?」
「そうですわね。あわよくば、ここのシステムを制圧することが出来れば、身共らの力で、ここに存在するフェイズファイターを動かすことが出来ます」
「そうすれば、一気に遠く離れている自治区にまで到達することも可能だからね」
第807自治区とて、決して警戒が手薄なわけではなかった。
今現在、地球のあらゆる場所で、〝ネオ・ネイティ〟と呼ばれる凶獣ヴェロンを使用した核融合情報自治区潰しが行われている。
いくら他の自治区との隔絶した情報統制が行われているとは言え、そのような緊急事態に対し、スミルノフの一派がそれを伝えないわけがない。
「期待外れですわね、シグレバナ? ここは元軍人上がりが多数を占める自治区なのだから、もっとこう、手ごたえがあっていいものだけれど……」
「ええ。何か腑に落ちませんわ。こんなに肉体に改造を施したナリをしていても、こんなにあっさりだなんて……」
元87部隊の彼女たちの行く先々には、多数の頸動脈ケーブルを切られた兵士たちが転がっている。
彼らは、決して命を絶立てれいるわけではない。だが、脳への主要アクセス部分を絶たれた彼らは、一様にして感覚を閉ざされ、思うように動くことが出来ないのだ。
「そのまましばらく、良い夢を見ててね。きっと、これからの現実の方が厳しいものになるんだから」
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