災厄の降臨㊺


「やはり……。これは先の戦乱からの因縁か……」

 愚かな行為であると知りつつも、彼女たちはヴェルデムンド新政府軍の命令に従うがまま、様々な工作任務をやり遂げて来た。

『地獄の美女軍団、魅惑の87部隊――』

 と称され、多くの反乱兵士たちに恐れられた過去を持つ彼女たちである。そんな彼女らは、数々の手練手管と殺人手法によって、敵対する〝反ヴェルデムンド新政府〟を標ぼうとした人々を地獄の底に引きずり込んで来たのだ。

 そんな彼女たちを、標的にされた者たちが恨まぬはずがない。

 いや、標的にされた人々はもう既に、あの世行きになってしまっている。

「ということは、つまり……。こ奴らを裏から操っている者の正体は――」

 間違いなく、反乱軍の生き残りか、その関係者というわけだ。

 彼女はこれで合点がいった。そして、この計画を画策した者の正体が見えてきた。

「そういうことだったのですね。だから身共らは、ずっとあの人たちの傍に……。あの人たちは、これが目的で身共らの能力を観察する上で、助けるふりをしながら、身の拠り所のない身共らを子飼いにしていたのですね。そうなのですね、島崎様……」

 皮肉なものである。

 彼女ら元87部隊の面々は、島崎らの一団に命からがら拾われたていで生活を共にしていた。

 しかし、その中身はと言えば、そのまま身体のアップデートもされず、資材不足や技術不足を理由に、戦乱期そのままの能力で彼ら反乱軍の生き残りの監視下に置かれていたのだ。

 そして再び、彼らが反旗の狼煙のろしが整うまで、様々な任務で彼らの良いように利用され、〝仲間〟として行動を共にさせられていたのだ。

「さぞや愉快でいらっしゃったのでしょうね、島崎様。これで身共もすべて納得がいきました。なぜ、かの寄留地の傍にヴェルシュ種の木が繁殖していたのかも。そして、なぜかの寄留地の傍にベムルの実が見つけられたのかも……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る