災厄の降臨㊵


 カレンバナ、シグレバナの両名は押し黙った。考えたくもなかった衝撃が、今確信に変わったからだ。

「やはり、お二人とも気づいてたんですね」

 小紋が抑え気味に語り掛けると、

「ええ、薄々は……」

「ただ、何となく……」

 彼女たちの落胆ぶりが、距離を離していても小紋にひどく伝わって来る。

「やっぱりそうだったんですね」

「ええ、一夜目の襲来を受けた時点で」

「根拠こそ、ありませんでしたが……」

 あの晩の襲来は、間違いなく元87部隊の彼女たちだけを狙ったものであった。それゆえに、彼女たちなりに、それ相応の因果を模索していたのだ。

「そうなんですね。まあ、すでにお二人ともお分かり頂いているとは思いますが、あの凶獣たちは何者かに操られていることが考えられます。なぜなら、こんなに統率が取れた行動を、今までのヴェロンが出来なかったからです」

「鳴子沢さま。それはつまり……」

「あの凶獣たちを操っている者こそが、身共らを陥れようと?」

「ええ、言い難いことだけど、多分そうだと思います。そして、それは……」

 と、小紋が言いかけた時、

「鳴子沢さま。来ます!!」

 シグレバナの感知によって、戦いの火ぶたが落とされた。

 凶獣たちは空から杭を打ち落とすように迫って来るのではなく、一旦谷底に降り、そこから這い上がるように上昇して来た。

 その飛空速度は、機械式の弓矢が打ち放たれたように鋭く、常人の目ではとても追い切れるものではない。

 しかし、元87部隊たる彼女たちの跳躍力をもってすれば何とかかわし切れる。

「ええい、こんなもの……!!」

 言って、カレンバナが身をひねりながらけた瞬間に、ここぞとばかりにヴェロンの脳天に十字手裏剣を放つが、

「あ、当たらない!!」

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