災厄の降臨㉑


 カレンバナとシグレバナは追い込まれていた。

 どんなに脳内に埋め込まれた予測演算装置を使用しても、なぜか追手の凶獣に先を越されてしまう。まるで、逆に彼女たちの動きを予測しているかのように、凶獣が二人の行く先々を追い込んで来る。

「そんな!! 身共らに埋め込まれた演算装置カリキュラマシーンに狂いはないはず!!」

「しかし!! これが現実だとすれば!!」

「もしかすると、演算装置がもう時代に合わなくなってしまったのですか……!?」

「そうでなければ、この凶獣たちが進化したということなのでしょうか……!?」

 直感で、二人はこのケダモノにもてあそばれていることを悟った。

 そしてこれは、今までの常識からではとても予測不可能なことでもあった。

 確かに凶獣ヴェロンには、元から知性というものが備わっていた。無論、それにはかなりの個体差があり、全体を通してみれば左程際立った知能と言ったものではない。

 そして、それらの目的とは、まさに捕食と増殖を繰り返すことが目的であり、それはいかにも生物的に単純なものであった。

 だが、今ここで起きている現実の彼女たちに対する行動は、まさかの、

「こやつ、間違いなく身共らをおちょくっています!! そうではありませんか、シグレバナ!?」

「そうです、あなたの言う通りです、カレンバナ!! ここにいるヴェロンは、身共らをまごうかたなきであることを認識しています!!」

 というものである。

 それは、今までの目的というよりも、目的であるようかのようだった。

「なんということ!! よもや狂ってしまったのですか、この世の中は!?」

「これでは、まるでこの世界の人類と一緒ではありませんか!?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る