スミルノフの野望㊴
そうやって、あの騒動から半年近くが過ぎたのだ。
しかし、この鋼の強靭さを持つデュバラをもってしても、最愛の伴侶であるクリスティーナのことを片時も忘れたことはない。
そして、そんなデュバラの複雑な心境を、あの小紋が察していないわけがない。
「デュバラさん、大丈夫かな……。口ではあんなこと言ってるけれど、本当は一刻も早くクリスさんと赤ちゃんを探しに行きたいんだろうに」
小紋とて、デュバラの内心にはそのような考えがあることぐらいは分かっていた。しかし、デュバラからすれば、このいばらの道の捜索に彼女を連れまわしていることが心苦しかったのだ。
(小紋殿が、いくら腕っぷしは強いと言っても、あくまでも女性は女性なのだ。こんな紛争の堪えない世界状況で、普通の生活もままならない旅路に、いつまでも付き合わすのはあってはならないことだ。ここは、機を
などと、互いに内心を分かっていながら、互いの気持ちを悟られないように日々を過ごしていた矢先である。
「大変だ、大変だあ!!」
一人の見回りの青年が大声を上げて運営本部へと駆け込んできた。
ここは寄留地とは言えど、あのヴェルデムンド世界の寄留地とは規模もテクノロジーもかけ離れた木造の住宅が立ち並ぶ集落である。
そんな木々の掛け合わされた建築材が、思い切りギシギシと音がかき立てられるほどに、青年の勢いは凄まじかった。
「どうしたのだ!? 君は警ら隊の青井主任じゃないか。いつも沈着冷静で大人しい君らしくもないぞ」
「島崎運営長、それがですね!! わたしのチームで、いつものようにこの寄留地の見回りをしていたらですね……」
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