驚天動地の呪い㉙


 小紋らは、竜子たちのグループの計らいにより、彼女らが運営する施設に数日の間泊めてもらうことになった。

 デュバラは長い間、クリスティーナの消息を探し続けていた。ゆえに、この二年もの間、落ち着くことがなかったデュバラにとって、この一時的な休息はとても有難いものになっていた。

 そして、それは小紋にとっても同じことで、収監所から連れ出されて以来、様々な試練を乗り越えて来た。そんな彼女は、どこへ行っても取り付く島もなかったために、精神的に目一杯なっていた。

(早くクリスさんを助け出したい気持ちはボクも同じだけど、ちょっとだけならデュバラさんも許してくれるよね……)

 あれから小紋は、竜子御自慢の空中庭園の窓から望む風景のとりこになっていた。

 そこにドアのチャイムが鳴る。

「私だ。デュバラだ。小紋殿、居るか?」

「はあい、居ます。今出ます」

 小紋は、一応のこと扉の向こうの存在がデュバラであることをのぞき窓から確認すると、

「どうぞ、デュバラさん。中に入って」

 そう言って、扉を開けるなり部屋の照明を点けた。

「なんだ。もう就寝中であったか? それなら、出直してくるが」

「ううん、違うよ。ただ、部屋の灯りを消して外を眺めてただけ」

「ほう、それは酔狂な」

 などと半ば茶化したような言い様をしたが、彼は南向きの窓に案内されるなり驚嘆の声を上げて納得した。

「む、むう、なんと……。これは言葉に出来ぬものが押し寄せて来るな」

「そうでしょう? すごいよね、竜子さんて。こんな時代に、こういったものを作っちゃうんだよ」

「うむ。同感だ。私も竜子殿には散々世話になった。私の場合は、私の体を気遣って真の底から疲れが取れる薬湯風呂をよばれた。しかも、ご丁寧に筋肉の張り取れるというという指圧師の手配まで」

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